2021年12月17日金曜日

米研究者らが4Dプリンティングに遠隔操作される脆弱性を警告

米国ニュージャージー州発:4Dプリンティング技術にあらたな脆弱性が見つかったとセキュリティ研究者らが警告している。4Dプリンティングは、熱や湿気などの刺激にさらされると形状変化する部品製造を可能にする新技術。たとえば、ある温度に達すると自動開閉するバルブや、2Dシートがある温度を超えると複雑な3Dオブジェクトへと自律的に変化する、といったことが可能になる。
ラトガース・ニュージャージー州立大学(ニューブランズウィック)の Tuan Le 氏らによると、今回見つかったのは、攻撃者が遠隔で4Dプリンターを乗っ取る可能性がある脆弱性。もし航空機や医療機器などのクリティカルな用途で使用した場合、「壊滅的障害」を引き起こす恐れがあるという。
予防措置として研究者らが一様に推奨しているのは、CT スキャンだ。CT スキャンは既存のどの方式よりも、改ざんの検出に優れていると述べている。試験結果によれば、30分間のスキャンで、ハッキングされたプロペラを正常な工程で製作されたプロペラと識別できた確率は 94.6% だったという。
他の回避策としては、1回限りの用途の製品の製作ならば製品検査を徹底すること、そして何よりも品質管理を徹底することに尽きると述べている。

2021年11月28日日曜日

英眼科病院が世界初のフルデジタル・3Dプリント義眼を患者に装着

英国発: ロンドンの眼科専門機関ムーアフィールズ病院はこのほど、フルデジタル・3Dプリントのみで製作された義眼を世界で初めて患者に適用したと発表した。
同病院医師によると、臨床試験でこの新技術が多くの患者に有効なことが証明され、義眼待ちの時間を少しでも減らせるものと期待する。
従来工法によるアクリル製義眼は眼窩形成で侵襲的処置が必須で、未成年者の患者では全身麻酔をかけなければならないケースがあるなど相当の困難が伴っていた。
義眼製作手順は、まず眼窩の簡単な3Dスキャンを行い、3Dプリンター用に患者の眼窩モデルを作成する。患者の正常に機能する眼球もスキャンを行って、義眼の精度を高めている。こうして作られた3Dデータが3Dプリンターに送られてプリントアウトされる。
3Dプリント義眼を装着した患者の Steve Verze 氏(47)は、「20歳から義眼を必要としていたが、問題は見た目の悪さ。しかしこの新しい3Dプリント義眼はすばらしい。今後どんどん改善されていくことでしょう」と喜ぶ。
現在の義眼製造工程は完成までに 6週間を要する場合があるが、3Dプリント義眼ではその時間は半分に短縮され、3Dスキャニングによって正確な義眼製作も可能になった。

2021年11月15日月曜日

3Dプリントソリューション国際見本市「 Formnext 2021 」が1年半ぶりに開幕

ドイツ発:11 月 16 ~ 19 日、積層造形(AM)と3Dプリントソリューションの国際見本市「 Formnext 2021 」が1年半ぶりにメッセ・フランクフルトで開催される。
今回は新型コロナウイルスのパンデミックで北米およびアジア地域の企業が渡航制限を受けている影響もあり、出展企業は欧州拠点社が中心になる模様。今回の出展企業は 600 社、うち海外企業の出展は半数余りと見られる。2019年に開催された前回の Formnext には出展企業 852、参加者は延べ 34,532 人の参加者が来場した。
おもな出展予定企業の内訳は次のとおり。
3Dプリンター関連: Nexa3D(米国、大量生産向け3Dプリントソリューション新製品および樹脂ソリューション)、Mimaki(日本、UV硬化インクジェット方式小型3Dプリンター 3DUJ-2207)、FuseLab(ベルギー、金属加工用3Dプリンター FL300Mの初出展)、他に Ricoh(日本)など。
押し出し技術関連:Essentium(米国、デュアルエクストルーダー HSE 240 HT)、Anisoprint(露、造形容積 600 x 420 x 300 mm の PROM IS 500 の出展)、Roboze(米国、自動化機能を進化させた大型3Dプリントソリューション ARGO 1000 の初出展)
産業用後処理ソリューション関連:XJet(イスラエル、サポート材スムーズ除去ソリューションの SMART)、AM Solutions(伊、残留粉体除去、金属加工物表面の均質化および平滑化を可能にする新製品 S1 Wet などの展示)、他にLincotek(伊)、Mimete(同)、WASP(同)など。

2021年10月21日木曜日

歯科3Dプリントの SprintRay Inc. が Usain Bolt 氏とパートナーシップ提携へ

米国カリフォルニア州発:デジタルデンティストリー(デジタル歯科)とメディカル3Dプリントソリューションの業界リーダー SprintRay Inc. はこのほど、ジャマイカの元陸上競技短距離選手 Usain St. Leo Bolt(ウサイン・ボルト)氏と5年間のパートナーシップを締結した。
同社と Bolt 氏はジャマイカ歯科医師会と協力して、世界クラスのデジタル歯科医療をジャマイカで利用できるようにすることを使命とした「 Bolt Labs, powered by SprintRay 」の立ち上げ資金も提供する。
同ラボプロジェクトの一環として、SprintRay 基金はボルト基金と共同でジャマイカ国内に歯科クリニックを設立する。これは3Dデンタルラボや移動式ユニットを含み、遠隔地居住者をはじめ、大人から子供まで、すべてのジャマイカ市民の歯科ニーズに対応できるようにするための施設になる。遠隔地への高水準の歯科医療サービス提供は、安価な歯科用3Dプリント技術を活用することによってもたらされる最大の恩恵だ。
Bolt 氏は、2021 年 10 月 21 日~ 24 日まで、米フロリダ州マイアミで初めて同社が初開催するイベント「3D Next Summit」に、基調講演者として業界リーダーや医師らと共に登壇する。


2021年10月8日金曜日

BCN3D が3Dプリンター群一元管理クラウドサービスを一新

スペイン発:FDM3Dプリンターベンダーの BCN3D は、企業向け Web ベース3Dプリンティングフリート管理プラットフォーム「 BCN3D Cloud 」を全面的に刷新したと発表した。一新された同プラットフォームを用いることで、クライアントはAM 事業規模を拡大し、3Dプリント工程全般をこれまで以上に効率的、かつ容易にコントロールすることが可能になる。
新しい「 BCN3D Cloud 」は、リモートにある3Dプリンターとリソース群の管理を一元化し、体系的なワークフローを簡単に実現する。新プラットフォームには「スタンダード」、「チームズ」、「プライベート」の3プランが用意される。
同「スタンダード」プランは、全ユーザーに適用される入門向けクラウドサービスという位置付け。主要機能はクラスター(グルーピング)で、ユーザーは特定の特性に従って傘下の3Dプリンターをグループ化し、統計データを表示して、リアルタイム分析ができる。
「チームズ」ではクライアント企業のチーム管理者に、ワークフロー機能と部門ごとの構成にカスタマイズされた役割とレベルごとの権限許可設定を可能にする。 同プラン利用料は年額 495 ユーロ(595 米ドル)で、3か月の試用期間付き。
「プライベート」プランは、厳格なプライバシーとセキュリティ要件が課される企業向けとなっている。

2021年9月27日月曜日

オーストリア Addion が複雑な眼科手術用3Dプリント眼球モデル開発に成功

オーストリア発:3Dプリント医療デバイス製造のメディカル3Dプリントサービス Addion GmbH は、眼球の複雑な手術モデル用途を想定した超高精細な眼球の3Dモデル開発に成功した。
同社の開発の成功に寄与したのは、3Dプリンターベンダー Stratasys の医療用3Dプリンター「 J750 Digital Anatomy 」。同機の持つマルチマテリアル、マルチカラーの AM プロセスおよび PolyJet ™ 技術により、従来では実現が困難だった人工眼球モデル製作が可能になったという。
従来技術では、人間の目のような柔らかくて水を多く含む組織を再現したモデル作成が難しく、とくに色合いや触感などの点で実際の人間の眼球とかけ離れていた。
人間の眼球はその複雑さゆえに複製困難な器官のひとつであり、複製には相当な時間とコストを要する。積層造形(AM)を利用すればカスタムメイド手術モデルを設計する際のこうした障壁は取り除かれるものの、素材、透明度、色などの点で、すべてのニーズを満たすことができないケースがあった。
Stratasys の PolyJet 技術搭載のこの医療専用3Dプリンターでは、複数のフォトポリマーとカラーを組み合わせることができるため、超リアルなパーツを作ることが可能になったと Addion 開発チームは述べている。

2021年9月12日日曜日

3Dプリント+スマート生態素材を用いた1型糖尿病患者向けインプラントが開発中

米国テキサス州発:ライス大学のバイオエンジニアリング研究者グループは現在、3Dプリントとスマート生体素材を用いて、インスリンを分泌する1型糖尿病患者向けインプラント開発に取り組んでいる。
これは Omid Veiseh、Jordan Miller 両氏の研究室が共同で行っている3年がかりの研究開発プロジェクトで、糖尿病研究の世界的な助成団体 JDRF の助成金を受けている。
Veiseh 助教と Miller 准教授は、ヒト幹細胞から作られたインスリンを分泌するβ細胞を用いてインプラントを開発。これが血中グルコース値[血糖値]を感知して適切量のインスリンを分泌することで血糖値を調整する。
生体工学が専門の Veiseh 氏は 10 年以上、細胞療法によって移植された部位を免疫系から保護する生体材料開発に従事してきた。バイオエンジニアリング学科のミラー氏は 15 年以上にわたり、血管系と呼ばれる血管網を持つ組織を3Dプリントする技術を研究している。
ライス大学のバイオエンジニアは、生体組織に変化可能な血管組織付きハイドロゲルを、無毒の液体ポリマーを使用した光硬化3Dプリントによって固結させて作成した。
このようにインプラントに血管組織を組み込むことで、β細胞組織が膵臓の自然な動きに近い形で動作できるものと同グループは期待を込めている。
1型糖尿病は、米国内に約160万人の罹患者がいるとされ、毎日100人以上が1型糖尿病と診断されている。1型糖尿病の治療にはインスリン注射でが使われるが、インスリン注入と食事・運動療法その他活動とのバランスをとる難しさが指摘されている。複数の研究によると、米国の1型糖尿病患者のうち、目標とする血糖値を常に達成している人は3分の1以下と推定されている。

2021年9月3日金曜日

「スーパーマリオ」を 90 秒でクリアする3D プリント製ソフトロボットハンドを開発

米国メリーランド州発:メリーランド大学の研究チームはこのほど、ワンステップで3D プリント可能なソフトロボットハンドを開発した。
開発したロボットハンドは集積流体回路(IFCs)を使用しており、「スーパーマリオブラザーズ」の 1ー1レベルを 90 秒以内にクリアすることができたという。
ソフトロボティクスは固形部品ではなく、空気圧で膨らむ柔軟度の高い新しいタイプのロボット創造を目的とする分野。動力も電気ではなく、水圧や空気圧を利用する。このため従来型ロボットより、対人作業間における固有安全性が高く、バイオメディカル機器、人工装具、自動化など、多分野で応用が効く。
しかし、これまでは曲げ伸ばし制御を行う流体部分の設計の難しさがネックだった。そこで同大チームは1ヵ所の圧力を変えるだけで複数の指を動かせる IFCs を実装したロボットハンドを1回の工程で3D プリントできるようにした。
PolyJet3D プリンターを使ってロボットを製作したことも成功の鍵だったという。PolyJet3D プリントでは、2D カラープリンターのように、複数素材を何層も重ねて3D プリントできる。そのため PolyJet3Dは、ソフトアクチュエータや流体回路などの機能を完備したソフトロボットを 1日で製作することができる。

2021年8月15日日曜日

NASA、ISS 内で月面基地計画用レゴリス3Dプリンターの実験を開始

米国発:NASA によると、国際宇宙ステーション(ISS)にこのほど、新たな実験装置がシグナス補給船によって運び込まれた。いずれも ISS に設置された、微小重力環境実験設備を活用した実験が行われることになっている。
とくに注目されているのが、NASA が推進する月面基地建設計画「アルテミス計画」で重要な役割を果たすと思われる、レゴリス3Dプリンターのプロトタイプ[ギリシャ神話のアルテミスは、月の女神を意味する]だ。今回実験を行う Redwire Regolith Print (RRP)プロジェクトによれば、月周回軌道上に構築される宇宙ステーション「月軌道ゲートウェイ」は、レゴリス3Dプリンターの恩恵をおおいに受けるだろうとしている。レゴリスとは、月面上に無尽蔵にある宇宙風化を受けた砂礫のこと。
RRP のレゴリス3Dプリンターは、月のレゴリスを素材として使用するために特別に設計された複数のエクストルーダーとプリントベッドで構成されており、すでに ISS に設置されている3Dプリンター「ManD」と併用される。同プロジェクトではまず、レゴリスが3Dプリント素材として使用できるかどうかを実証する。それが成功すれば、3Dプリント素材の特性評価に用いられる一連の ASTM 規格に準拠したレゴリス素材の強度試験にかけることになる。
ISS ではこのアルテミス計画で使用されるレゴリス3Dプリンターの他に、長期宇宙滞在による骨格筋量の低下(サルコペニア)低減とその創薬応用、ステーション内の CO2 濃度軽減、児童生徒参加型の微小重力環境における原生生物モジホコリの生態観察なども行われる。

2021年7月23日金曜日

オランダで世界初のステンレス鋼製3Dプリント橋が完成

オランダ発:アムステルダム市内の運河にこのほど、3Dプリントで建造された世界初のステンレス鋼製の橋「MX3D Bridge」が完成した。
「MX3D Bridge」は歩行者および自転車専用の橋で、全長は 12 m、溶接トーチを装着した市販の産業用6軸ロボットアーム4基を使用して、半年がかりで出力された。出力された橋の各パーツは、アムステルダム中心部アウデザイツ・アフテルバーフワル運河に「架橋」された。総重量は 4.5 トンで、これは金属3Dプリント構造物としては世界最大になる。
同橋は 2018 年 10 月に開催された、「 Dutch Design Week 」で展示公開されたものと同じ。 橋の出力完了後、同橋には 10 数個のセンサーが取り付けられ、通行量や天候の変化で橋の構造面に現れる歪みやズレ、振動、温度変化などを監視する仕組みが導入されている。収集された各種データは、今後の3Dプリント橋のデジタルモデルに反映されることになっている。
将来的には、このユニークなステンレス鋼製橋のデジタルモデルを活用して橋の構造的特性の研究や、データの変化を機械学習させてメンテナンスや補修の必要性の判断に役立てられるという。さらにはより大規模で複雑な建造物において、鋼鉄製の3Dプリント構造物をどのように利用するかの判断への活用も期待されている。

2021年7月7日水曜日

究極の3Dプリンター「量子3Dプリンター」の未来を語る気鋭の女性研究者

英国発:オックスフォード大学ウォルソンカレッジのフェロー研究員で理論物理学者の Chiara Marletto 教授は、5月に刊行した著書( The Science of Can and Can’t)において、「ユニヴァーサル・コンストラクター」という概念に触れている。言わば「究極の3Dプリンター」とでも呼ぶべきこの「ユニヴァーサル・コンストラクター」とは何か。SF 映画『スタートレック』シリーズに登場する、原子レベルで万物を生成可能な「レプリケーター」のようなマシンなのだろうか。

ユニヴァーサル・コンストラクターとは、物理学者で数学者のジョン・フォン・ノイマンが1950年代、ユニヴァーサル・チューリング・マシン(ユニヴァーサル・コンピュータ)という概念の一般化のために提唱した理論モデルのこと。

ユニヴァーサル・コンピュータとは、物理的に可能なあらゆる計算の実行がプログラム可能なマシンです」と Marletto 氏は説明する。「対してユニヴァーサル・コンストラクターとは、計算だけでなく、物理的に可能なあらゆる変換を行うことができるマシンになります。とくにフォン・ノイマンが考案したのは、自己増殖可能な細胞の動きを模倣するマシンでした」

ユニヴァーサル・コンストラクターと3Dプリンターと共通する要素は、そのままユニヴァーサル・コンストラクターの決定的特徴とも重なる。すなわち初期の RepRap 3Dプリンティング運動にインスピレーションを与えた自己複製能力であり、ハイエンドな産業向け3Dプリンターを定義付ける、新しい3Dプリンター用パーツを作る能力になる。

また3Dプリンターの進化に伴う実用的問題として、プロセスシミュレーション(およびモニタリング)を考慮する必要性がある。工業用3Dプリンターは膨大な量のデジタルデータを生成するため、その高速処理にはますます高性能なコンピュータが必要になってくる。Marletto 教授は、この膨大な演算処理こそ、将来のユニヴァーサル量子コンピュータが処理する最適なタスクだと指摘する。

ユニヴァーサル・コンストラクター技術が実用化された暁には、量子ユニヴァーサル・コンピュータを使ってデータを管理し、コンストラクターが機能するために必要な計算が実行できるようになります」 3Dプリント技術の進化はまだ始まったばかりで、同教授の言う「ユニヴァーサル・コンストラクター」理論の完全な理解にも程遠いものの、探究すべき要素には共通項が多く含まれている、ということは明らかだ。

2021年6月22日火曜日

手持ちの3Dプリンターをフードプリンターに改造して楽しもう! 

オーストラリア発:新型コロナウイルスのパンデミックで、大好きなホビーや趣味が思うようにできなくなったという人も多いだろう。一方、DIYやパン作り、手芸など、家にいながらにして楽しめるホビーの人気が高まっている。そこで、プラスチック製品をプリントアウトする低価格帯の3Dプリンターをフードプリンターに改造する、というのはどうだろうか? 
一般的なフードプリンターは、原料を入れるカートリッジと、カートリッジから食品を出力するためのプリントヘッドから構成されている。フードプリンターは何年も前から市場に出回っているが、その価格は 安くても1,000 ポンド[日本円で約 15 万円超]から。しかし自宅で楽しみたいのなら、そんな高い製品を買い足す必要などない。手持ちの3Dプリンターを改造するだけでよい。
改造のポイントは、プラスチックのフィラメントを溶解して押し出すプリントヘッド部をペースト/クレイ素材出力用の「シリンジポンプ」に交換すること。シリンジポンプは、プラスチック製の注射器と、必要に応じて供給材料を絞り出す機構からなる。注射器本体がプリンターカートリッジとして機能し、モーター駆動によって原材料を針先から絞り出すようになっている。
3Dプリントのおもしろいところは、3Dプリンターの改造に入る前に、そのシリンジポンプをその3Dプリンターでプリントアウトできることだ。用が済めば、元のプリントヘッドに戻すだけで再び通常の3Dプリンターとして使用可能になる。
実際の改造手順と、シリンジポンプを含む全パーツの3Dデータはこちらに記述してある。シリンジはほとんどの半固形素材に対応し、通常の3Dプリンターと同じように食品を3Dプリントすることができる。今回は試験的に2種類の食用ガムを3Dプリントしてみた。

2021年6月12日土曜日

米豪の共同研究チームが「目と頭脳を持った」新しい医療用3Dプリント技術を開発

オーストラリア発:クイーンズランド工科大学教授 Dietmar Hutmacher 氏とオレゴン大学教授 Paul Dalton 氏はこのほど、マシンビジョンと人工知能( AI )を組み合わせた医療用3Dプリンターによる、オールカスタムメイドの組織インプラント施術を可能にする共同研究を発表した。
それによると、両教授率いる米豪の共同研究チームはヒトの心臓弁、骨組織の足場材、歯の組織の再生医療用の膜組織、最小侵襲手術用のソフトアクチュエーター(ソフトロボティクス)など、過去に3Dプリントされたことがないさまざまな生分解性人工組織の3Dプリント化を可能にするという。
Hutmacher 氏は、次のように説明する。「我々は、メルトエレクトロライティング(MEW)プリンターとマシンビジョン、およびマシンラーニングシステムを組み合わせたビジョンシステムを開発した。これは、押し出された繊維状材料の軌道全体を画像化して、リアルタイムでエラーを修正し、同時にマシンラーニングシステムが送られてくる情報をもとに足場材の繊維径を予測して、より精確な最終製品を作るのが目的だ。マシンビジョンと AI が加わることで、MEWプリンターにはこれまで欠けていた “目”と“頭”が備わり、人間には認識不可能なプリントパラメータの自律的調節も可能になるだろう」。

2021年5月18日火曜日

英スタートアップが家庭用 FDM 3Dプリンターで出力可能なレコードプレイヤーキット2種を発売へ

英国・バース発:スタートアップの Frame Theory 3D は、音楽愛好家や DIY 愛好家をターゲットにした3Dプリントターンテーブル組立キット「 SongBird 」プロジェクトを立ち上げ、KickStarter 上で資金調達キャンペーンを展開中だ[近日中に終了]。
現時点で 167 人の支援者から 25,442 英ポンド(約394万円)の資金を集め、当初目標額 10,000 英ポンドの2倍以上をすでに獲得した。同社によると、発売時期は 10 月を予定している[5月19日時点での総額は4,169,363円に達している]。
「 SongBird 」レコードプレイヤーキットは、ほとんどの家庭用デスクトップ3Dプリンターで出力可能で、市販のすべての LP アルバムが再生可能。同キットには、3Dプリント済みパーツのセット「プリンテッドキット」と、「メーカーキット」の2種類が用意されている。
「メーカーキット」は、手持ちの FDM タイプのデスクトップ3Dプリンターで全パーツをプリントアウトしたいユーザー向けキット。当然のことながらキットに含まれているパーツはすべて3Dプリンターで再生とリサイクルが可能で、環境にも配慮されている。 「 SongBird 」の市販価格は、「メーカーキット」が 150 英ポンド23,212円)、「プリンテッドキット」が250ポンド(38,687円)となる予定。
 

2021年5月5日水曜日

オランダ初の3Dプリントハウスへの入居開始

オランダ発:現地時間 4月 30 日、オランダ初の3Dプリントハウスに入居するオランダ人夫妻が住宅のキーを受け取った。 
 同国初の3Dプリントハウスオーナーが入居したのは、アイントホーフェン市近郊ボスライク地区に建つ3Dプリントハウス。これは「Project Milestone」で建設された5棟のうちの1棟で、アイントホーフェン工科大学、Van Wijnen、Saint-Gobain Weber Beamix、Vesteda、アイントホーフェン市、Witteveen+Bosによる建設およびイノベーション共同プロジェクトの成果だ。 
 この3Dプリントハウスは同国の厳しい建築基準に準拠しているが、コンクリート3Dプリンティング技術によって、丸みを帯びた傾斜した壁面など、独創的デザインが実現されている。 同3Dプリントハウスは 24 枚の3Dプリントコンクリートパーツから成り、各層は約 120 時間かけてプリントアウトされている。その後、各部材はトラックで建設現場に運ばれて、基礎の上に設置された。最後に屋根材と骨材を取り付け、内装工事を施した。 
3Dプリントハウスは平屋建てで、床面積は 94 m²。広々としたリビングルームと、2つのベッドルームを備える。外観は周囲の景観と同化するよう、大きな岩のような形が採用されている。厚い断熱材を組み込み、ヒートグリッドに接続しているため、エネルギー性能係数は 0.25 と高エネルギー効率住宅となっている。 

2021年4月25日日曜日

米大研究チームが、エクストルーダーの熱特性を3Dプリンターの機種特定に活用する手法を発表

米国発:ニューヨーク州立大学バッファロー校のコンピューターサイエンティスト Zhanpeng Jin 氏は、3Dプリンターの不正使用を減らす目的で、オブジェクトを出力した3Dプリンターを特定できる手法の開発に取り組んでいる。
 同氏は以前から、オープンソースも含め、インターネットからダウンロード可能な3D CAD さえあれば、コンピューター部品や玩具、完全に機能する拳銃や狙撃用ライフルまで、その気になれば欲しいものは何でもプリントアウトできる野放しの現状を憂慮していた。
Jin 氏を中心とする同大研究チームは「サーモタグ:3Dプリンターの隠れた ID を機種特定の指紋および透かしとして利用する」と題した論文で、3Dプリンターのエクストルーダー・ホットエンドがそれぞれ独自の加熱特性を持つ点に着目。これを人間の指紋のように、3Dモデルを出力したエクストルーダーの特定、ひいては3Dプリンターのモデル識別のために使用できないかを調査した。Jin 氏はこの「エクストルーダーの指紋」を、「サーモタグ」と呼んでいる。
同氏はこのサーモタグを、ノート PC でメールを書くことになぞらえる。各エクストルーダーに固有なサーモタグを比較照合すれば、キーストロークを追跡するキーロガーがメールを書いた個人を特定できるように、出力元の機種特定に利用できる。3Dプリンターの機種が特定されれば、その機種を使って狙撃用ライフルを違法に製造した場合、該当する3Dプリンター購入者の身元判明も可能になる。
今回の研究では、同一モデル3Dプリンターの45 基のエクストルーダーのサーモタグを比較した結果、92% の精度で出力した3Dプリンターを特定することができたという。また Jin 氏は、エクストルーダーを他のモデルと交換して隠蔽工作されるケースもあり得るため、各エクストルーダーのサーモタグを比較できるデータベース構築も重要だ指摘する。

2021年4月8日木曜日

世界の3Dプリント市場が新型コロナにより今後も拡大すると英調査会社が発表

英国発:調査会社 Business Research Company は「3Dプリンター市場グローバルレポート 2021:COVID-19 による成長と変化」と題する調査レポートを発表した。
それによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、3Dプリント市場にも影響が現れているという。それをもたらしているのが、急激に高まった製薬・医療業界への3Dプリントの導入だ。
パンデミック期間中、世界各地の医療機関はベッドや医療機器などの深刻な不足に見舞われ、危機的状況に陥った。COVID-19 感染患者は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスクがあり、一部患者の延命措置には高度な人工呼吸サポートが必要となる。こうした救命機器不足を補うため、3Dプリント製機器の需要が急伸したと見られる。
3Dプリンターの世界市場は 2015 年以降、年平均 16.8 % で拡大を続け、2020 年には約 86 億ドル規模に達した。さらに同市場の規模は 2025 年までに 19.4% 増の 200 億ドルにまで成長すると見込まれている。2025 年以降は 年率 13.4% で成長を続け、2030 年には 390 億ドルに達すると予測されている。 

2021年3月24日水曜日

3D Systems が米海軍向け3Dプリント耐蝕素材を共同開発へ

米国発:3D Systems は、Huntington Ingalls Industries グループの造船所 Newport News Shipbuilding と共同で、レーザー積層造形法で使用する銅ニッケル合金(CuNi および NiCu)のパウダー素材開発計画を発表した。
CuNi/NiCu 合金は耐蝕性に優れ、洋上建造物や船舶部材に最適な金属素材。Newport News Shipbuilding では、この 2 種の合金からなるパウダー新素材を使用することで船舶部品の AM 化を可能とし、製造前工程を最大 75% 短縮して部品供給の効率化が図れると期待をかけている。同造船所では最終的に、この新素材を使用してバルブ、ハウジング、ブラケットや鋳造工程用交換部品の製造を目指す。
CuNi/NiCu は低温から高温に至るまで高強度・高剛性を維持することで知られ、多くの分野で利用されているが、従来の鋳造法では 1年かそれ以上もかかる製造前工程の長さがネックとなっていた。
3D Systems は 10 数年前から米海軍と共同で、航空機用部品や潜水艦の部品など各種用途に AM ソリューションを提供してきた。米海軍は以前から、交換部品用途への AM 活用に関心を示していた。AM が活用できれば、とくに艦船が陸地から離れた洋上にいる場合、破損した部品を低コストで迅速に交換することができるからだ。

2021年3月23日火曜日

カリフォルニア州に米国初の3Dプリント住宅分譲地が誕生へ

米国カリフォルニア州発:コーチェラバレーの砂漠地帯に、3Dプリント製住宅からなる分譲地がまもなく誕生する。
持続可能な不動産開発を手掛ける Palari は、建設技術会社 Mighty Buildings(本社オークランド州)と共同で、ランチョ・ミラージュの 2万m² の敷地に環境に優しい 15 棟の3Dプリント住宅を建設する計画を進めている。完成すれば米国初の3Dプリント住宅分譲地になる。
Mighty Buildings は本社の広大な倉庫内に設置された、ガレージほどもある巨大な3Dプリンターを使って住宅を製造している。この住宅専用3Dプリンターは、24 時間以内に床面積約 33 m² の住宅が製造可能。同社によれば、製造工程のうち最大 80 % まで自動化可能で、従来工法と比べて作業時間は 95 %、廃棄物は ¹/10 になるとしている。使用素材もすぐに固まる特殊建材を使用しており、オーニングや外装、断熱層などを一度の造形で住宅に追加できるという。
3Dプリント住宅は 20 世紀中葉のモダン様式を採用。135m² の敷地内に3つの寝室 ×2つのバスルームのメイン住居と、2つの寝室 ×1バスルームのサブ住居からなる。販売価格は 3BR/2BA のベースモデルが 59万5,000ドルから、2 世帯構成モデルにアップデートすると最高 95万ドル。
また各戸には 930 m² のバックヤードが用意され、プール、東屋、ホットタブ、焚き火台、屋外シャワー等のアメニティを追加購入できる。
こうした3Dプリント住宅建設の背景には、深刻なカリフォルニア州の住宅不足問題がある。同州では 2025年までに 180 万 ~ 350 万戸の新規住宅建設が必要と見積もられている。
メキシコのある NPO も2019 年、低所得者層向け3Dプリント住宅の建設計画を発表している。テキサス州オースティンでも、今年後半に3Dプリント住宅の建設が予定されている。 このような追い風に乗り、Mighty Buildings は 2月、4,000 万ドル資金調達に成功している。

2021年3月1日月曜日

英大学グループが新型コロナウイルスにも効果がある抗菌新素材を3Dプリントで作成

英国ウェストミッドランズ州発:ウルバーハンプトン大学の研究者グループAMFM(Additive Manufacturing Functional Materials)はこのほど、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)を消滅させる新しい3Dプリント抗ウイルス素材を開発した。
同グループの研究者 John Robinson 氏によると、今回、試作した新素材は銀、銅、タングステンを組み合わせ、レーザー積層造形法による3Dプリントを使用して作られている。各素材にはそれぞれ抗菌性があるため表面のウイルス汚染やウイルス拡散を防ぐ効果があるという。
Robinson 氏の話「今回、試作した抗ウイルス素材には、生物学的に安全な COVID-19 標本に対して、5時間以内に100%のウイルス不活化を示しており、従来の銅コーティング製品よりも抗ウイルス性能が飛躍的に向上している」。
現在、英国や南アフリカ、ブラジル由来と考えられる新型コロナウイルスの変異株による新たな流行が懸念されているが、今回開発された新素材がそれを食い止める効果を発揮してくれるかもしれない。

2021年2月13日土曜日

Stratasys が産業向け PolyJet 3Dプリンター「J850™ Pro」など3製品を発売へ

イスラエル、米国発: Stratasys(NASDAQ:SSYS)はこのほど、マルチマテリアル対応エンタープライズ向け PolyJet™ 3Dプリンター「 J8 」シリーズ最新3製品を発表した。
 今回、同シリーズに投入されたのは「 J850 Pro 」、「 J850 Prime 」、「 J826 Prime 」。 同社によれば、テクスチャマッピングやカラーグラデーションを含むフルカラープリント機能により、最終製品と同様な外観と感触を持つプロトタイプを作成し、デザインの意図を正確に示すことができる。また、7種類の材料の同時使用が可能な汎用性も備えているとしている。3機種のうち、「 J850 Pro 」のみ今月から受注可能になっている。 
 最大造形容積は以下の通り。 J826 Prime:255 x 252 x 200 mm 
J850 Pro、J850 Prime:490 x 390 x 200 mm 
 J850 Pro:Vero™硬質ファミリーの全グレースケール、Agilus30™柔軟材料ファミリー、VeroClear、VeroUltra Clear、Digital ABS、Digital ABS Plus、Digital ABS2 Plusなど
 J850 Prime:Vero™硬質ファミリーのニュートラルシェード、VeroVivid 各色、Agilus30 フレキシブルマテリアル、Transparent VeroClear、VeroUltraClear 
 J826 Prime:Vero™硬質ファミリーのニュートラルシェード、VeroVivid 各色、Agilus30 フレキシブルマテリアル、トランスパレント VeroClear、VeroUltraClear

2021年1月28日木曜日

Oqton、工業 AM を含む AI 支援生産自動化に向けた資金を調達

ベルギー発:エンジニアリングソフトウェアと製造ハードウェアを統合した製造業向けオペレーティングシステム開発のスタートアップ Oqton はこのほど、4,000万ドルの資金調達を行った。
同社によると、今回調達した資金は同社プラットフォームのブラッシュアップに使われると同時に、AM(積層造形)、ロボット溶接、CNC加工などの市場における業務パートナーシップ拡大に振り向けられるという。
AM 市場は爆発的に拡大を続けている。市場調査会社 Reports and Data は、同マーケットは年平均成長率 14.4 % で 2027 年までに 266億8,000万 ドルに達すると予測する。
AM は従来の射出成形のような技術に比べ、必要リソースのカット、生産サイクルの短縮、柔軟な設計ワークフローの実現といった利点がある。しかし、生産ラインの全般的自動化や高額な運用コストなどの課題がまだ残っている。
米国とベルギーに拠点を置く Oqton (従業員数 56 )は、複数のファブリケーション機能を1つのプラットフォームに統合したサブスクリプションベースのクラウド型製造工程ソリューションを開発している。また CNC、金属/ポリマー3Dプリント、およびハイブリッドAM、切削加工の各ワークフローの自動化も手掛けている。同社の製造現場向けプラットフォームにはAI による製品検査アルゴリズムやパーツ形状の事前分析、およびリアルタイムキャリブレーションが組み込まれ、最適化や部分修正も自動的に提案される。