2026年3月30日月曜日

3Dプリント業界ライターが初の3Dプリントアートブック刊行に向けたクラファンを展開中

米国発:AM 業界メディアや『Forbes』誌などで長年、3Dプリント関連記事を執筆してきたライター兼編集者の Michael Molitch-Hou 氏は現在、3Dプリントがアートに与えた影響をたどるハードカバーのビジュアル大型書籍を出版するためのクラウドファンディングに取り組んでいる。
Impossible Works: The Book of 3D Printed Art と題された同書は、クラウドファンディングが成功して刊行される運びとなれば、3Dプリンティングが美意識に与えた革新を真正面から取り上げた初の書籍となる。 同書は本文 250 ~ 300 ページ、図版 350 枚以上で、彫刻、建築、ファッション、航空宇宙、医療、食品の広範な分野で試作用途として始まった3Dプリントが、この 10 年で美術館に収蔵されるアート作品となり、製品の生産手段となり、臨床現場に応用されるようになっていった過程のビジュアルな記録となる予定だ。
計画では紙書籍判に先行して、デジタル版の年内刊行を目指す。紙書籍版は年明け2月頃の刊行を予定する。また 75 部限定で、3Dプリントで製作した特別な表紙カバーが付く。カバーはトウゴマ由来ポリアミド12(PA12)を使用した再生樹脂製で、実現すれば、初の3Dプリント製書籍カバーとなる。

2026年2月28日土曜日

3Dプリント銃の製造を禁止する法案がワシントン州議会に提出

米国ワシントン州発:3Dプリントで作成された銃火器(ゴーストガン)への懸念が高まるなか、ワシントン州議会は3Dプリント兵器の拡散を阻止するための法案(HB 2321)をこのほど提出した。
先週下院に初上程された新法案は、「3Dプリンターに特定のブロック技術を装備することを義務付け、銃器の不法製造を防止する」ことを主眼とする。 法案 HB 2321 は 2027年7月1日以降、銃器や違法な銃部品を出力できないようにする「ブロック機能」が3Dプリンターに非搭載の場合、同州内で3Dプリンターの製造販売を禁じるものだ。また、これらのブロック機構が「高い信頼性」をもって当該部品の出力要求を「即座に」拒否することや、ユーザーによるいかなる回避策も阻止する機能の搭載が義務付けられる。
同法案は義務付けるブロック機能を「銃器設計図検出アルゴリズム」と定義し、同規定に違反した場合はC級重罪に処されることになる。同規定に違反したと認められた者は、最高5年の収監刑および 15,000 米ドルの罰金刑に処される可能性がある。
3Dプリント銃の法的規制を講じる州は、ワシントン州で最後とはならないだろう。1月初旬にはニューヨーク州が3Dプリント銃の段階的な禁止に動いている。同州は3Dプリンターの安全対策義務化の法制化を図るとともに、銃本体や銃部品を含む3Dデータの共有や所持の取り締まりを強化している。

2026年1月20日火曜日

死んだメスの蚊の口吻を超極細3Dプリンターノズル化する技術を開発

カナダ発:マギル大学(モントリオール)の研究者グループは、死んだメスの蚊の口吻を超微細3Dプリント用ノズルとして利用する技術(ネクロプリンティング)を開発したと発表した。 同グループによると、死んだ昆虫の器官の一部を〝再利用〟するため、開発コストはきわめて低く、天然素材のため環境にも優しく、完全な人工ノズルよりも高精度であり、宇宙空間や歯科、バイオプリンティングなど幅広い分野で応用可能としている。
メス蚊の口吻は多くの点で、3Dネクロプリントに適した構造体だ。特筆すべきは、わずか20μm という内径で、同グループによると、人工の極細ノズル先端よりも最大で 100 % 近くも細い。また、ネクロプリントで作成されたノズルは生分解性のほかに、驚くほど直線維持性能と安定性があり、最大60 kPa(キロパスカル、0.6 気圧に相当)の内部圧力に耐えられる。
ただしネクロプリンティング用ノズルはそのままでは機械的強度が低いため、3Dプリントで生成したバイオ足場材で補強する必要がある。同グループはこの強度問題を解決すべく、生死を問わず、天然素材を活用した3Dプリンター用超微細ノズルの開発に引き続き取り組む。


2025年7月31日木曜日

UCLA 研究者がパーキンソン病かどうかを簡単に判別できる3Dプリントペンデバイスを開発

米国カリフォルニア州発:パーキンソン病は手指の震えや体の硬直、動作緩慢や移動困難といった運動機能障がいを伴う神経変性疾患で、世界で 1,000 万人以上が罹患していると考えられている。
現状では根本的治療法がなく、早期発見と診断が頼みだが、生前診断の正診率は運動障がい疾患の専門家でさえ8割台にとどまる。病理変化を反映する脳脊髄液中のタンパク質や化合物レベルを計測するバイオマーカー(サロゲートマーカー)に基づく診断法はあるが、こちらは専門機器や、高度な訓練を受けた医療専門家が必要だ。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究者グループはこうした問題を解決すべく、パーキンソン病特有の運動機能疾患を簡単に判別できるペンデバイスを開発、3Dプリントで製作した。 
同グループによると、この3Dプリントペンデバイスの「ペン先」には磁性インクが充填され、デバイスを紙などの表面に接地させて動かすと、ペン先の磁気特性が変化する。中のインクが動くことでペン内部の金属コイルに電位差が発生し、電流信号が記録される。これで、筆記時の手指の震えを数量化する仕組みだという。
また同グループは、被験者が紙の上や空中に波線や渦巻きを描いたり、文字を書いたりしたときに発する信号が、手指の動きを正確に反映していることを発見した。次に、さまざまな AI 機械学習モデル(MLモデル)を活用して、16 人の被験者(3人はパーキンソン病患者)がこのペンデバイスを動かしたときの電流信号を分類した。その結果、ある ML モデルは学習後、パーキンソン病患者と健常者とを 96.22 %の平均精度で判別可能なことが明らかになったという。

2025年3月12日水曜日

F1やレーシング用ホイールチェア部品の3D プリント化━━ホンダの取り組み例から

日本発:自動車メーカーのホンダ(本田技研工業)は、レーザー粉末床溶融結合法(LPBF)を独自に改良した金属3Dプリント技術を F1や車椅子の部品製造に活用している。 
LPBF は、鋳造や鍛造では成形できない複雑な形状の生成にもちいられ、単品のみの製造を迅速に行なったり、少量生産に適した3Dプリント技術だが、欠点もある。そこで同社研究開発部は、イナートガスを造形室内に循環させて、溶融金属由来のガスやスパッタによる「す」のような欠陥を予防する変形予測シミュレーション技術を導入した。
さらに、各積層面を撮影して溶融状態や融解温度、レーザー出力をチェックした結果を積み上げて最適な温度とガスフローの決定に役立てたり、各積層面の引張強度試験を行い、レーザー出力が適正かどうかを判定してもいる。 
改良型 LPBF による部品の製造例として、F1部品(ピストンや、ターボチャージャーなどのタービンハウジング)と、レーシング用ホイールチェアのハンドルがある。F1部品のほうは、従来は精密鋳造で製造されていたが、現在はニッケル主体の耐熱合金であるインコネルを素材として3Dプリントで仕上げられている。
レーシング用ホイールチェアのハンドルはアルミ合金製で、アスリートの体型に合わせてカスタマイズが容易にできるのが特徴だ。以前は溶接方式だったため、ハンドルバーのカスタマイズは困難だった。

2024年11月14日木曜日

加ピザハット運営会社がピザスライス保温容器の3Dプリントデータを無償で提供中

カナダ発:カナダ国内でピザ宅配フランチャイズ「ピザハット」を運営する PH Canada Company は現在、ソニーのゲーム機 PlayStation5(PS5)の排熱を利用してピザを保温する容器「PIZZAWRMR」の3Dプリント用データを無償提供している(STL ファイルにアクセスするには氏名とメールアドレス、居住国の入力が必要)。
PIZZAWRMR の意匠は、ピザハットロゴの小屋の赤屋根をあしらっている。蓋はラップトップ PC スタイルで開閉し、中のピザスライスを簡単に出し入れできる。トップボックス内はピザスライス数枚分のスペースがある。PS5の排気を吹き込む構造で、一度に複数枚のピザスライスが保温できる。
ただしピザスライスはアルミトレーの上に載せて入れる必要がある。ピザクラストの屑や油脂が PS5に混入するのを防ぐためだ。
DL ページには PIZZAWRMR(本体、左スタンド、蓋、排気導入口、調整スタンド)の STL ファイルと PDF ガイドが用意されている。PDF ガイドによると、提供されている STL ファイルは「約 30 x 3.3 cmの背面通気口を備えた横置きゲーム機にのみ適合する」デザインとなっている。PIZZAWRMR を3Dプリントするためには、少なくとも 38 x 38 cm の広い造形ベッドを持つ3Dプリンターが必要。そのため、多くの FDM デスクトップタイプの3Dプリンターでは出力ができない(3Dモデルデータを切断しない限り)。PIZZAWRMR を3Dプリント可能な製品は Elegoo Neptune 4 Max、Prusa XL、あるいは Elegoo Orange Storm Giga などになる。

2024年8月31日土曜日

ガラス3Dプリントの新技術「ボリュメトリック加熱法」の研究開発が進行中

米国インディアナ州発:ノートルダム大学の研究者グループは現在、ガラス3Dプリントの新方式の開発に取り組んでいる。 
既存の3Dプリントテクノロジーには一般的なプラスチック樹脂フィラメントを溶融させる方式(FDM、FFF)や金属粉を焼結する方式(SLS など)、住宅建造用の大型3Dプリンターに見られるセメントを積層造形するタイプ、幹細胞由来のバイオ素材を使用する医療用のバイオ3Dプリントなど多岐にわたるが、依然として積層造形(AM)テクノロジーにとって難関なのが、ガラス素材をもちいた3Dプリントだ。ガラスは透明な素材というだけにとどまらず、薬品耐性や耐熱性、剛性に優れているという特徴がある。 
現在主流のガラス3D プリント方式は、ガラスフィラメントをレーザーなどの高エネルギー源で瞬時に溶融して造形するエクストルージョン法と、ガラス含有樹脂を使用した SLS ライクな焼結工程を後処理として行う焼結法があるが、いずれも短所がある。たとえば焼結法の場合、使用に耐えうるガラス密度の達成が難しく、後加工の焼結時に製品が収縮して外寸に狂いが生じるといった問題がある。外寸問題については DED(指向性エネルギー堆積法)方式ならば克服可能だが、レーザービームを照射された素材表面と内部のガラス分子の溶融にタイムラグが生じる問題は残る。 
こうした制約を回避するため、同大の研究者グループは「表面加熱」の問題に着目し、「ボリュメトリック加熱」が有効なことを発見した。ボリュメトリック加熱法では、ガラス素材の表面と内部の両方を同時に加熱することが可能になったという。 
まず、完全に透明なガラスを用意する。次いで、照射レーザーのエネルギー吸収材をガラスに塗布する。レーザービームはガラスを透過し、ガラス粒子を満遍なく加熱する。マイクロヒーターをガラス内に均一に配置して、各ガラス粒子をいっせいに加熱するようなものだ。 
今回発表された実験結果では、積層ベッド移動速度の最大値がガラス3D プリント速度の限界値だったことから、レーザー DED 方式(彼らは DGF[デジタルガラス成形法]と呼んでいる)の3Dプリンターを改良すれば、現行の FFF 方式と同等の高速造形も不可能ではないという。