2021年8月15日日曜日

NASA、ISS 内で月面基地計画用レゴリス3Dプリンターの実験を開始

米国発:NASA によると、国際宇宙ステーション(ISS)にこのほど、新たな実験装置がシグナス補給船によって運び込まれた。いずれも ISS に設置された、微小重力環境実験設備を活用した実験が行われることになっている。
とくに注目されているのが、NASA が推進する月面基地建設計画「アルテミス計画」で重要な役割を果たすと思われる、レゴリス3Dプリンターのプロトタイプ[ギリシャ神話のアルテミスは、月の女神を意味する]だ。今回実験を行う Redwire Regolith Print (RRP)プロジェクトによれば、月周回軌道上に構築される宇宙ステーション「月軌道ゲートウェイ」は、レゴリス3Dプリンターの恩恵をおおいに受けるだろうとしている。レゴリスとは、月面上に無尽蔵にある宇宙風化を受けた砂礫のこと。
RRP のレゴリス3Dプリンターは、月のレゴリスを素材として使用するために特別に設計された複数のエクストルーダーとプリントベッドで構成されており、すでに ISS に設置されている3Dプリンター「ManD」と併用される。同プロジェクトではまず、レゴリスが3Dプリント素材として使用できるかどうかを実証する。それが成功すれば、3Dプリント素材の特性評価に用いられる一連の ASTM 規格に準拠したレゴリス素材の強度試験にかけることになる。
ISS ではこのアルテミス計画で使用されるレゴリス3Dプリンターの他に、長期宇宙滞在による骨格筋量の低下(サルコペニア)低減とその創薬応用、ステーション内の CO2 濃度軽減、児童生徒参加型の微小重力環境における原生生物モジホコリの生態観察なども行われる。

2021年7月23日金曜日

オランダで世界初のステンレス鋼製3Dプリント橋が完成

オランダ発:アムステルダム市内の運河にこのほど、3Dプリントで建造された世界初のステンレス鋼製の橋「MX3D Bridge」が完成した。
「MX3D Bridge」は歩行者および自転車専用の橋で、全長は 12 m、溶接トーチを装着した市販の産業用6軸ロボットアーム4基を使用して、半年がかりで出力された。出力された橋の各パーツは、アムステルダム中心部アウデザイツ・アフテルバーフワル運河に「架橋」された。総重量は 4.5 トンで、これは金属3Dプリント構造物としては世界最大になる。
同橋は 2018 年 10 月に開催された、「 Dutch Design Week 」で展示公開されたものと同じ。 橋の出力完了後、同橋には 10 数個のセンサーが取り付けられ、通行量や天候の変化で橋の構造面に現れる歪みやズレ、振動、温度変化などを監視する仕組みが導入されている。収集された各種データは、今後の3Dプリント橋のデジタルモデルに反映されることになっている。
将来的には、このユニークなステンレス鋼製橋のデジタルモデルを活用して橋の構造的特性の研究や、データの変化を機械学習させてメンテナンスや補修の必要性の判断に役立てられるという。さらにはより大規模で複雑な建造物において、鋼鉄製の3Dプリント構造物をどのように利用するかの判断への活用も期待されている。

2021年7月7日水曜日

究極の3Dプリンター「量子3Dプリンター」の未来を語る気鋭の女性研究者

英国発:オックスフォード大学ウォルソンカレッジのフェロー研究員で理論物理学者の Chiara Marletto 教授は、5月に刊行した著書( The Science of Can and Can’t)において、「ユニヴァーサル・コンストラクター」という概念に触れている。言わば「究極の3Dプリンター」とでも呼ぶべきこの「ユニヴァーサル・コンストラクター」とは何か。SF 映画『スタートレック』シリーズに登場する、原子レベルで万物を生成可能な「レプリケーター」のようなマシンなのだろうか。

ユニヴァーサル・コンストラクターとは、物理学者で数学者のジョン・フォン・ノイマンが1950年代、ユニヴァーサル・チューリング・マシン(ユニヴァーサル・コンピュータ)という概念の一般化のために提唱した理論モデルのこと。

「ユニヴァーサル・コンピュータとは、物理的に可能なあらゆる計算の実行がプログラム可能なマシンです」と Marletto 氏は説明する。「対してユニヴァーサル・コンストラクターとは、計算だけでなく、物理的に可能なあらゆる変換を行うことができるマシンになります。とくにフォン・ノイマンが考案したのは、自己増殖可能な細胞の動きを模倣するマシンでした」

ユニヴァーサル・コンストラクターと3Dプリンターと共通する要素は、そのままユニヴァーサル・コンストラクターの決定的特徴とも重なる。すなわち初期の RepRap 3Dプリンティング運動にインスピレーションを与えた自己複製能力であり、ハイエンドな産業向け3Dプリンターを定義付ける、新しい3Dプリンター用パーツを作る能力になる。

また3Dプリンターの進化に伴う実用的問題として、プロセスシミュレーション(およびモニタリング)を考慮する必要性がある。工業用3Dプリンターは膨大な量のデジタルデータを生成するため、その高速処理にはますます高性能なコンピュータが必要になってくる。Marletto 教授は、この膨大な演算処理こそ、将来のユニヴァーサル量子コンピュータが処理する最適なタスクだと指摘する。

「ユニヴァーサル・コンストラクター技術が実用化された暁には、量子ユニヴァーサル・コンピュータを使ってデータを管理し、コンストラクターが機能するために必要な計算が実行できるようになります」 3Dプリント技術の進化はまだ始まったばかりで、同教授の言う「ユニヴァーサル・コンストラクター」理論の完全な理解にも程遠いものの、探究すべき要素には共通項が多く含まれている、ということは明らかだ。

2021年6月22日火曜日

手持ちの3Dプリンターをフードプリンターに改造して楽しもう! 

オーストラリア発:新型コロナウイルスのパンデミックで、大好きなホビーや趣味が思うようにできなくなったという人も多いだろう。一方、DIYやパン作り、手芸など、家にいながらにして楽しめるホビーの人気が高まっている。そこで、プラスチック製品をプリントアウトする低価格帯の3Dプリンターをフードプリンターに改造する、というのはどうだろうか? 
一般的なフードプリンターは、原料を入れるカートリッジと、カートリッジから食品を出力するためのプリントヘッドから構成されている。フードプリンターは何年も前から市場に出回っているが、その価格は 安くても1,000 ポンド[日本円で約 15 万円超]から。しかし自宅で楽しみたいのなら、そんな高い製品を買い足す必要などない。手持ちの3Dプリンターを改造するだけでよい。
改造のポイントは、プラスチックのフィラメントを溶解して押し出すプリントヘッド部をペースト/クレイ素材出力用の「シリンジポンプ」に交換すること。シリンジポンプは、プラスチック製の注射器と、必要に応じて供給材料を絞り出す機構からなる。注射器本体がプリンターカートリッジとして機能し、モーター駆動によって原材料を針先から絞り出すようになっている。
3Dプリントのおもしろいところは、3Dプリンターの改造に入る前に、そのシリンジポンプをその3Dプリンターでプリントアウトできることだ。用が済めば、元のプリントヘッドに戻すだけで再び通常の3Dプリンターとして使用可能になる。
実際の改造手順と、シリンジポンプを含む全パーツの3Dデータはこちらに記述してある。シリンジはほとんどの半固形素材に対応し、通常の3Dプリンターと同じように食品を3Dプリントすることができる。今回は試験的に2種類の食用ガムを3Dプリントしてみた。

2021年6月12日土曜日

米豪の共同研究チームが「目と頭脳を持った」新しい医療用3Dプリント技術を開発

オーストラリア発:クイーンズランド工科大学教授 Dietmar Hutmacher 氏とオレゴン大学教授 Paul Dalton 氏はこのほど、マシンビジョンと人工知能( AI )を組み合わせた医療用3Dプリンターによる、オールカスタムメイドの組織インプラント施術を可能にする共同研究を発表した。
それによると、両教授率いる米豪の共同研究チームはヒトの心臓弁、骨組織の足場材、歯の組織の再生医療用の膜組織、最小侵襲手術用のソフトアクチュエーター(ソフトロボティクス)など、過去に3Dプリントされたことがないさまざまな生分解性人工組織の3Dプリント化を可能にするという。
Hutmacher 氏は、次のように説明する。「我々は、メルトエレクトロライティング(MEW)プリンターとマシンビジョン、およびマシンラーニングシステムを組み合わせたビジョンシステムを開発した。これは、押し出された繊維状材料の軌道全体を画像化して、リアルタイムでエラーを修正し、同時にマシンラーニングシステムが送られてくる情報をもとに足場材の繊維径を予測して、より精確な最終製品を作るのが目的だ。マシンビジョンと AI が加わることで、MEWプリンターにはこれまで欠けていた “目”と“頭”が備わり、人間には認識不可能なプリントパラメータの自律的調節も可能になるだろう」。

2021年5月18日火曜日

英スタートアップが家庭用 FDM 3Dプリンターで出力可能なレコードプレイヤーキット2種を発売へ

英国・バース発:スタートアップの Frame Theory 3D は、音楽愛好家や DIY 愛好家をターゲットにした3Dプリントターンテーブル組立キット「 SongBird 」プロジェクトを立ち上げ、KickStarter 上で資金調達キャンペーンを展開中だ[近日中に終了]。
現時点で 167 人の支援者から 25,442 英ポンド(約394万円)の資金を集め、当初目標額 10,000 英ポンドの2倍以上をすでに獲得した。同社によると、発売時期は 10 月を予定している[5月19日時点での総額は4,169,363円に達している]。
「 SongBird 」レコードプレイヤーキットは、ほとんどの家庭用デスクトップ3Dプリンターで出力可能で、市販のすべての LP アルバムが再生可能。同キットには、3Dプリント済みパーツのセット「プリンテッドキット」と、「メーカーキット」の2種類が用意されている。
「メーカーキット」は、手持ちの FDM タイプのデスクトップ3Dプリンターで全パーツをプリントアウトしたいユーザー向けキット。当然のことながらキットに含まれているパーツはすべて3Dプリンターで再生とリサイクルが可能で、環境にも配慮されている。 「 SongBird 」の市販価格は、「メーカーキット」が 150 英ポンド23,212円)、「プリンテッドキット」が250ポンド(38,687円)となる予定。
 

2021年5月5日水曜日

オランダ初の3Dプリントハウスへの入居開始

オランダ発:現地時間 4月 30 日、オランダ初の3Dプリントハウスに入居するオランダ人夫妻が住宅のキーを受け取った。 
 同国初の3Dプリントハウスオーナーが入居したのは、アイントホーフェン市近郊ボスライク地区に建つ3Dプリントハウス。これは「Project Milestone」で建設された5棟のうちの1棟で、アイントホーフェン工科大学、Van Wijnen、Saint-Gobain Weber Beamix、Vesteda、アイントホーフェン市、Witteveen+Bosによる建設およびイノベーション共同プロジェクトの成果だ。 
 この3Dプリントハウスは同国の厳しい建築基準に準拠しているが、コンクリート3Dプリンティング技術によって、丸みを帯びた傾斜した壁面など、独創的デザインが実現されている。 同3Dプリントハウスは 24 枚の3Dプリントコンクリートパーツから成り、各層は約 120 時間かけてプリントアウトされている。その後、各部材はトラックで建設現場に運ばれて、基礎の上に設置された。最後に屋根材と骨材を取り付け、内装工事を施した。 
3Dプリントハウスは平屋建てで、床面積は 94 m²。広々としたリビングルームと、2つのベッドルームを備える。外観は周囲の景観と同化するよう、大きな岩のような形が採用されている。厚い断熱材を組み込み、ヒートグリッドに接続しているため、エネルギー性能係数は 0.25 と高エネルギー効率住宅となっている。