2013年11月26日火曜日

Motorola Mobility と 3D Systems が「組み立て式 Android 端末」で提携

現地時間 11月 22日、Google 傘下の Motorola Mobility と3Dプリンター製造大手 3D Systems は Motorola が主導する「 Project Ara 」で、複数年の開発提携を結んだと発表した。

「 Project Ara 」は、ユーザーがパーツを自由に組み合わせて Android スマートフォンを自作できる開発システムで、ユーザー自身の手でアップグレード可能、しかも破損した場合でも補修部品を提供してもらえばよく、従来のように本体をそっくり買い換える必要もない。

3D Systems はプレスリリースで、「本プロジェクトでは迅速な生産および供給の継続的体制の構築が求められる」と述べている。

Motorola は以前、3D Systems と共同で、3Dプリント技術を体験してもらう「メイカソン」ツアーを工学系学生を対象に行なったことがある。

「 Project Ara では素材強度、アンテナ用導電性インクを使用した造形などの分野で技術革新が要求される。これらの技術革新によって、3Dプリンティングによる迅速な大量生産が可能になるはずだ」と、Motorola 先端技術プロジェクト グループ長 Regina Dugan 氏はプレスリリースで指摘している。

Motorola は Google 傘下になって以降、生産およびサプライチェーン体制刷新のため試行錯誤を重ねてきた。今夏にリリースしたAndroid スマートフォン Moto X は、テキサス州フォートワースにある改修された同社工場で組み立てられており、これは同社初の「メイド・イン・U.S.A. 」のスマートフォンだという。

2013年11月25日月曜日

MakerBot、ボストンに直営店をオープン

米国マサチューセッツ州発:MakerBot は 11月 21日( 現地時間 )、ボストンのニューベリー・ストリートに直営店をオープンした。直営店出店は、昨年オープンしたニューヨーク店に続いて、2店舗目。
「頭で思い描いたものが現実に作れるようになり、手にすることができる」。同社創立者の一人で現 CEO、Bre Pettis 氏は開店初日にこう述べた。「世界中でただ一人、自分が欲しいと思うものをご自身で生み出すことができるようになる」。
20 年以上もの間、エンジニアやメーカーが使用してきたのは大型かつ高価な 3Dプリンターだったが、MakerBot は一般ユーザーが使えるほどシンプルで、ハイエンド PC や大画面 TV 並みの出費で買えるプリンターを製造する。
直営2号店となるボストン店では今後、オンデマンド 3Dプリントサービスも提供開始の予定だ、と Pettis 氏は述べた。
同社がボストンに直営店を開店するにはもっともな理由がある。「弊社製品の顧客の中心地が、まさにここボストンだ。これまでもボストン市内の学生寮などに弊社製品を多数、納入してきた。弊社製品なら小型冷蔵庫の上に載せてもぴったりなサイズだからね」と同氏。
またボストン周辺は、3Dプリント関連産業が多く集まっているエリアでもある。MIT メディアラボのスピンオフである Formlabs もその一つ。サマーヴィルに本拠を置く同社は 2014 年2月、3,300 ドルの新型 3Dプリンターをリリース予定だ。またケンブリッジに本拠を置く MatterLabs は、Web ブラウザ内で動作する CAD ソフトを制作し、ボストンに本拠を置く新興企業 3-Spark は電気回路を内蔵したオブジェクトの造形が可能な 3Dプリンターをもっか開発中だ。
MakerBot ボストン店には、12 歳の Leon McCarthy 君も来店し、Pettis 氏と共に開店記念イベントに参加していた。Leon 君は左手の指が欠損した状態で生まれた。父親の Paul氏は、3Dプリントアウト可能な義手造形のためのソフトウェアを開発した「Robohand Project」のことを知り、McCarthy 氏は 3Dプリンターを借り受けて息子のための義手を自作した。イベントで Leon 君は Bre Pettis CEO と共に、3D プリンターで自作した義手を来店者に披露した。
Leon 君は、従来の方法で義手を製作してもらったら何万ドルもかかったと思うと語った。「MakerBot の 3Dプリンターなら、( 材料費は )5ドルだよ」。
げんに、Leon 君がフットボールのプレイ中にボールをつかもうとした時、父親と作った義手を壊してしまったが、新しいパーツを造作なくプリントアウトした。「こんどはもう少し人間の手らしくしたい。関節にもっと丸みをつけたい」。
画像:Bre Pettis MakerBot CEO と Leon McCarthy 君( Reuters 配信 )。


参照元記事

2013年11月24日日曜日

大学間で 3Dプリンター導入競争 ?! 

このほどサンディエゴで開催された米国機械学会( ASME )の年次国際学会および展示会で、3Dプリントおよび 3Dプリントによるもの作り革命が今後の生活にどのような影響を与えるかについて議論が交わされた。

McKinsey Global Institute のレポートによれば、今後のわれわれの暮らしや仕事、世界経済に影響を及ぼす可能性のある 12 の技術のひとつが 3Dプリンティングだという。

そして米国機械学会長 Madiha Kotb 氏も、各大学は最新の 3Dプリントおよび 3Dプリントによるもの作りを積極的に取り入れるべきだと指摘する。理想的には、K-12( 幼稚園から高校まで一貫して受けさせるカリキュラム )にも取り入れるべきだとも述べている。

米国内の各大学では、3Dプリントを体験してもらうスペースを設ける動きが広まりつつある。いずれも図書館内に体験スペースを設置するケースが多い。

ニューハンプシャー大学やアラバマ大学、およびイリノイ大学アーバナ-シャンペイン校ではすでに 3Dプリンター体験コーナーを設置済みで、学生も教職員も共に 3Dプリンターの使用法や造形を学べる。アラバマ大学の場合、53 人の学生がプリンター操作を学び、体験スペースを利用した学生や地元住民の反応も極めて前向きなものだった。イリノイ大学アーバナ-シャンペイン校では MakerLab を開設、以来約 1,000 人が訪れたという。

一方、名門私立ジョージタウン大学やエモリー大学のキャンパスには 3Dプリンティング技術体験のできる場所は用意されていない。3Dプリンターのない大学は、大学進学予定者とその保護者から進路希望から外される可能性もある。

Lorna Sheridan 氏は、カリフォルニア州のソノマ・アカデミーの 3Dプリントクラスで製作に没頭する高校生の息子の姿を見て、胸踊らせている。息子の進むべき大学選定に当たっては、3Dプリンティングのような最新技術に投資しているかどうかをまず見極めるという。

2013年11月19日火曜日

Microsoft、「3D Builder」の無償提供開始

Microsoft は現地時間 11月15日、Windows OS の最新版「Windows 8.1」で動作する 3Dモデル作成アプリケーション「3D Builder」を公開した。同アプリは Windows ストア経由で無償配布される。

「3D Builder」は至ってシンプルなアプリであり、これから 3Dプリントを始めたい個人ユーザー向き。同アプリにはカボチャや風車、機関車などの 3Dモデルサンプルがあらかじめライブラリーとして登録されているが、カスタマイズの自由度はあまり高くなく、実行できるのはオブジェクトのリサイズ、回転、接合などに限定される。

また Microsoft 直営店では、MakerBot 製 3Dプリンター「MakerBot Replicator 2 Desktop 3D Printer」の取り扱いも開始した。価格は 2,199米ドル。

先月、Gartner が発表した報告によれば、2013年末までの 3Dプリント関連支出の総額は 4億1,500 万米ドルと見込まれ、そのうち 3億2,500 万米ドルが企業における 3Dプリント関連支出額だという。とはいえ、事務用品小売大手 Staples でも 3Dプリンターの販売をすでに始めており、また直近のオバマ大統領の一般教書演説を受けた MakerBot でも、教育現場での 3Dプリンター導入促進を狙ったクラウドファンディングを立ち上げるなど、個人ユーザー層開拓の流れは加速している。Microsoft が「3D Builder」を企業向けではなく、あえて個人ユーザー向けに、しかも極力シンプルなアプリとして提供したのは、この一連のトレンドに乗って、個人ユーザーの 3Dプリンター需要を掘り起こしたい考えなのだろう。

なお MakerBot は 14日、「Replicator 2」用 Windows 8.1 用ドライバーソフトを、Windows Update Service にて提供開始すると発表した。同社は Microsoft と共同で、「Replicator 2」の Windows 8.1 用ドライバーを開発してきた。


参照元記事

2013年11月18日月曜日

世界初、3Dプリントで復顔の試み

ウェールズ州スウォンジにあるモリソン病院の医療チームはこのほど、CTスキャン画像から 3Dプリンターで出力したチタニウム製インプラントを使って、バイク事故で深刻な外傷を負った患者の顔を復元するオペレーションを行なっている。

チタニウム製インプラントは先天性症状に対して使用された先例はあるが、交通事故による外傷に対して臨床応用されるのは今回が世界初だという。入院患者は緊急手術を終えたところで、本格的な復顔はこれからになる。


手順は、まず患者の損傷していない側の顔面を CTスキャンしてその鏡像を作り、これに基づいてガイド器具と 医療用チタニウムでできたインプラントを 3Dプリンターで造形する。ガイドとインプラントの製作には世界でも数社しかないという高度な 3Dプリント技術を有するベルギーの企業が当たる。復顔手術では顔の骨の切断と再配置も含まれ、難易度が高い。

モリソン病院の顎顔面治療ユニットでは 2006年から、全英製品設計開発センターと共同で、「外科手術における応用再建技術センター( CARTIS ) 」を設立しており、今回の復顔プロジェクトは CARTIS 主導で進められている。

復顔作業に当たっている Peter Evans 氏は、「緊急手術までは全力を尽くした。本オペレーション自体は実質上すでに完成しているので、早く復顔作業に当たりたい」。

なお、今回の復顔プロジェクトは現在、科学博物館で開催中の「 3D: Printing The Future 」でも出展されている。

2013年11月12日火曜日

公共図書館で 3Dプリンター体験を

ニュージャージー州のスパータ公共図書館はこのほど、MakerBot Replicator 2X を導入した。

「価格は 3000 ドルもしなかった。3Dプリンターの価格は下がり続け、もはや世間の人が考えているほど高くはない」と、同図書館システム管理者 David Costa 氏。「他地域の図書館ではすでに 3Dプリンター導入の事例が多くあり、利用者サービス差別化の一環として、われわれも導入を決めた」。3Dプリンター導入済み図書館 でもっとも多く採用されていたのが MakerBot 製だったので、同図書館でも MakerBot 製品を選択したという。

今回、購入したプリンターは、10月30日にオープンした Space@Sparta という新しい体験型イベントセクションの呼び物の一つだ。ここに来れば、だれでも気軽にモノ作り体験ができる。「当館ではこれまでずっと、学びのスペースを提供してきた。3Dプリンター導入も自然の成り行きだと言える。プリンター導入は当館を利用される地域住民の要望でもあったし、地域住民に新しいことにトライしてもらう機会を与える一助にもなる。いずれは新開発した試作品のテストをしたいデザイナーや、なにかのプロジェクトで活動する学生らが最大限有効活用するだろう」。

マサチューセッツ州アンドーヴァーに住む Chris Larson 氏もそんな利用者の一人だ。「はじめは子どものために1台購入するつもりだったが、ここに来ればプリンターはあるから、その必要はないかな。もっとも使うのに順番待ち、なんてことがなければの話だけど」。

スパータ公共図書館が導入した機種はデュアルヘッド仕様なので、同時に2色のプリントができる。用意されているフィラメントは現在6色だが、今後は色数をさらに増やすと Costa 氏。2.5cm 四方の物体の造形で消費されるフィラメントの長さは、約 30cm だ。

同図書館では現在、3Dプリンター講座を週3日開催しているが、11月分はすべて予約で埋まっているという。各受講者が確実にプリンターを操作できるようにするため、同講座では一回当たり受講者数を3人に限定している。

Costa 氏によれば、3Dスキャナー購入も検討中だという。導入済みのプリンターと組み合わせれば、造形したオブジェクトを丸ごと複製することも可能になる。

2013年11月10日日曜日

3Dプリンターに乗り気になれない5つの理由

3Dプリンター ファンに一言。頭を冷やせ。

3Dプリントは次世代の産業革命だ、と喧伝するテクノロジーの予言者たち。彼らの声に乗せられ、自宅地下室ににわか工場を構えてトヨタやボーイングの向こうを張る個人ユーザー。投資家も我先にと、 Stratasys Ltd.、3D Systems Corp、ExOne Co. といったプリンター製造メーカー株に群がる。HP でさえ、この 3Dプリンター市場に参入するのはもうまもなくだろうと言われている。


だが、3Dプリンティング技術がこの世に出現して 30年ほどが経過したことを考えると、業界規模は思っているほどには大きくない。あるコンサルティング会社の試算では、2012 年度の 3Dプリント業界の収益は 世界全体で 22億米ドルで、その半分は設計・試作関連が占めるという。完成された製品に限った収益は約 28% の 6億ドルに過ぎず、これは製造業の世界全体における収益の 0.01% にも満たない数字だ。

以下、3Dプリントにおける問題点を5つ挙げる。
  1. ロードバイクや携帯電話の自作は、数年先になってもできない。

    今や MakerBot などのホームユース向け 3Dプリンターは 2,200ドルほどで購入可能になったが、このような廉価帯機種で造形できるのはせいぜいが装身具や小間物だ。一般個人ユーザーが壊れた冷蔵庫の部品を自作できるようになるには少なくともあと 10年はかかる。
  2. そんなに速くない。

    プロユース向け高級機種でも、複雑な形状の物体を造形するには何時間、場合には数日かかる。3Dプリントの現状は遅くて高コストであり、大量生産には向いていない。
  3. できあがってもすぐに使えない。

    造形する物によっては研磨などの仕上げ工程が必要となる場合が多い。小物の場合は製品同士の接着などといった作業も必要だ。
  4. あらゆる素材に対応するメリットという点では射出成形などの従来方式が有利

    現段階では 3Dプリンターで加工可能な素材にはプラスチックやセラミック、一部の金属といった制約がある。
  5. 現行製品では車や飛行機を「まるごと」プリントアウトできない。

    たとえば Stratasys の最大級プリンターでも、対応可能な物体はせいぜい 1m 四方ほど。競合他社ではさらに大型の製品が製作可能なプリンターを開発中だが発売時期がいつになるのか、また巨大な構造物の造形が問題なく行えるかといった点に関しては依然として不透明なままだ。
とはいえ、3Dプリント、正式には積層造形という生産方式がさして重要ではないと言っているのではない。3Dプリント加工技術によって、製造各社は試作品の設計と試験が速く、容易に行えるようになったし、複雑な形状の部品を一発で造形できるという点は、従来方式の加工では不可能だったことだ。

参照元記事

2013年11月4日月曜日

3Dプリントは大きなビジネスになるか

3Dプリントのイメージには問題があるように思われる。リビングにあるデスクトップ PC につないでちょっとした小物を作るといった、ホビイスト向けの道楽のように見られたりするからだ。だが、新しい発想を実現させる手段として 3Dプリンティング テクノロジー導入を検討する企業の数は増加し続けているのも事実だ。

3Dプリントは正式には「積層造形法」と呼び、産業界ではこちらの呼称が定着している。家庭用でも業務用でも、3Dプリントの原理は同じだ ―― 何もないところから材料を一層一層、薄いレイヤー状に積み重ねて造形する手法だ。従来の「減法式の」成形法に比べると切削、研磨といった工程がないため材料も無駄にならない。そして この「積層造形法」、つまり 3Dプリント最大の利点は、「製品を速く、自前で製作でき、1回限りの生産にも対応できる」ことにある。

ボーイングは 1997年以来、航空機製造における「積層造形」の研究開発を続けており、エアダクトや配線カバーといった小型部品はすでに「積層造形法」で製造し、また金属加工可能な積層造型機でさまざまな試作品も製作している同社によると今後は構造材などの大型部材も積層造形で組み立てることを目指している。


ボーイングと並んで NASA も、長年に渡ってこの 3Dプリンティング テクノロジー活用法を探ってきた。ジェット推進研究所( JPL )ではすぐにでも搭載可能な新コンセプトによる部材の試験用として、3Dプリンターで部品を試作している。同研究所ではMakerBot や 3D Systems などの
コンシューマー向け機種も含め、10数台の 3Dプリンターを所有しており、研究者のブレインストーミング用に活用している。今のところ結果は上々で、たとえば今夏、Webカム スタンドとして作った小物の回転機構から、開発中の新宇宙船用パラシュート展開機構への応用も生まれている。「これはまさしく ' アハ ' 体験の瞬間だった」と、同研究所 CTO の Tom Soderstrom 氏は言う。

同氏によれば、いずれはすべての宇宙探査船を 3Dプリントで「プリントアウト」したいという。「宇宙船は無人で、小型化され、大判美術本くらいのフラットパネル状にまで小さくなるだろう。すべての宇宙船がボイジャーのように見える必要はない」。


また
Soderstrom 氏は、現状ではコンシューマー向け 3Dプリンターは開発途上にあり、使用機種によっては完成品の差が大きく、3Dデザインを出力するソフトウェアも扱いにくいと指摘する。3Dプリンター用デザインソフトはプリンターベンダーが Autodesk のような 3D CAD として、あるいは Siemens のような製造大手が提供する場合もある。それでも同氏は企業の CIO に対して 3Dプリンターへの投資を推奨し、また、どの機種が自分たちの事業にとって最適なのか、助言を与える「IT コンシェルジュ」として登用可能な人材を見つけるべきだともいう。

「高価格の最高機種は必要ないが、廉価タイプでは高品質な部品の製造は難しい。そんな時に IT コンシェルジュは役に立つだろう」。コンシェルジュには、単一製品において多種多様な素材をいかに扱うかといった知識が必要だろうと、と同氏は述べている。

また物流大手 UPS は、3Dプリンターを購入するゆとりのないスタートアップや小規模事業者向けに、営業拠点店頭で完成品を受け取れるサービスをすでに試験運用している。UPS では現在米国内の6営業所に 3Dプリンターを設置しており、料金は造形する製品デザインの複雑さによってさまざまだが 10 ~ 500米ドル。利用者は、まず STL 形式の3Dデータを持ち込み、造形可能かテストした上で見積もりを出してもらう。同社は1年間の試験運用の結果を見て、3Dプリンター設置拠点を増やすかどうか決めるとしている。


オンライン 3Dプリントサービスとしては、すでに Shapeways Quickparts がある。こちらは利用者からアップロードされたデータを受け取り、それを自社設備でプリントアウトして完成品を宅配する。

他のオンライン型サービスとして、3D Hubs がある。これはいわば不動産マーケットプレイス Airbnb の 3Dプリンター版だ。3Dプリンターを持っていないユーザーが、プリンターを所有する近隣の他ユーザーにプリントしてもらうことを支援するサービスだ。

一部製造業では、3Dプリントはすでにきわめて重要な工程となっているが、中小企業において3Dプリント導入の最大の足かせとなっているのは、Gartner のさる産業アナリストの発言を引けば、「3Dプリント活用のしかるべきタイミングについて、認識じたいが足りない」ことにあるのかもしれない。3Dプリントはなにもボーイング並みの大企業である必要はない。高度にカスタマイズされたデザインの試作品の少量製作に向く 3Dプリントは、小規模事業者にとっても有益な選択肢の一つとなる。

参照元記事

2013年11月2日土曜日

3Dプリンターで住宅問題も解決 ?! 

南カリフォルニア大学大学院で製造エンジニアリング プログラムを主催する Behrokkh Khoshnevis 教授が実用化に情熱を注いでいるのが、住宅をまるごと「造形」してしまう巨大な 3Dプリンターによる無人・全自動のロボット工法だ。

「全世界で満足な住居を持てずにいる人が 10億近くもいます。この現状が貧困、病気、無教育、犯罪、人工過剰など諸問題の温床となっています」。昨年春にカリフォルニア州オーハイで開催された TEDx トークで Khoshnevis 教授はこう訴えた。

Khoshnevis 教授が現在開発中の Contour Crafting は、この人間の「住」問題を根本から解決することを目指すものだ。同教授がプレゼンテーションで披露した動画では、巨大なクレーン状の 3Dプリンターがコンクリートを吐き出してレイヤーを一層ずつ積み重ねて壁を作っていく様子が紹介されている。開発中の住宅建設用 3Dプリンターの試作機では、2,500平方フィート( 約 230平方m )の住宅ならばなんと 20時間で完成するという。ほぼ一日で家がまるごと1軒、完成することになる。

にわかには信じられない夢物語のような話にも聞こえるが、
 Khoshnevis 教授によれば決してそんなことはないという。現に NASA は Contour Crafting に出資して、月面探査を想定したさまざまな構造物が無人作業で組み立てられるかどうか研究してもいる。だが Khoshnevis 教授にとっての最終目標は、やはり「貧困層向け居住区を速く、安全に、効率的にまるごと」提供することだ。

また
 Khoshnevis 教授によれば、この 3Dプリント工法で建てられた建物は直線デザインに限定されず、構造的に堅牢で見た目もよい曲線構造もプリントアウト可能な点を利点として指摘する。住宅デザインも CAD なので簡単にカスタマイズできる。壁用のコンクリート部材は材料削減と軽量化のため中空構造だが、それでも 1万 psi の強度があり、これは従来工法で作った住宅用壁面材よりも強いと教授は言う。

同教授の試算では、この 3Dプリントによる全自動建築は材料費が従来比で 25-30%、建築予算面では 20-25% 抑えることができるが、もっとも大きく削れるのは人件費で、45-50%も節約できるという。そして CO2 削減にもつながり、省エネルギーでもあるとしている。

だが、これは何千何百万という建設労働者が失業することにならないだろうか ?  そんなふうには思わないと Khoshnevis 教授は 1900 年代初めを引き合いに出して言う。当時、人々は農業の機械化によって大勢の農民を追いやり、その結果、経済が破綻するのではないかと恐れていた。たしかに今日、農業従事者は米国総人口の1.5% 未満だが、それでも破綻していないと説明した上で、むしろ Contour Crafting によって新しい仕事が生み出され、とりわけ女性や高齢の働き手にとって新たな受け皿が建設業界にできるとさえ指摘している。

参照元記事