2021年4月25日日曜日

米大研究チームが、エクストルーダーの熱特性を3Dプリンターの機種特定に活用する手法を発表

米国発:ニューヨーク州立大学バッファロー校のコンピューターサイエンティスト Zhanpeng Jin 氏は、3Dプリンターの不正使用を減らす目的で、オブジェクトを出力した3Dプリンターを特定できる手法の開発に取り組んでいる。
 同氏は以前から、オープンソースも含め、インターネットからダウンロード可能な3D CAD さえあれば、コンピューター部品や玩具、完全に機能する拳銃や狙撃用ライフルまで、その気になれば欲しいものは何でもプリントアウトできる野放しの現状を憂慮していた。
Jin 氏を中心とする同大研究チームは「サーモタグ:3Dプリンターの隠れた ID を機種特定の指紋および透かしとして利用する」と題した論文で、3Dプリンターのエクストルーダー・ホットエンドがそれぞれ独自の加熱特性を持つ点に着目。これを人間の指紋のように、3Dモデルを出力したエクストルーダーの特定、ひいては3Dプリンターのモデル識別のために使用できないかを調査した。Jin 氏はこの「エクストルーダーの指紋」を、「サーモタグ」と呼んでいる。
同氏はこのサーモタグを、ノート PC でメールを書くことになぞらえる。各エクストルーダーに固有なサーモタグを比較照合すれば、キーストロークを追跡するキーロガーがメールを書いた個人を特定できるように、出力元の機種特定に利用できる。3Dプリンターの機種が特定されれば、その機種を使って狙撃用ライフルを違法に製造した場合、該当する3Dプリンター購入者の身元判明も可能になる。
今回の研究では、同一モデル3Dプリンターの45 基のエクストルーダーのサーモタグを比較した結果、92% の精度で出力した3Dプリンターを特定することができたという。また Jin 氏は、エクストルーダーを他のモデルと交換して隠蔽工作されるケースもあり得るため、各エクストルーダーのサーモタグを比較できるデータベース構築も重要だ指摘する。

2021年4月8日木曜日

世界の3Dプリント市場が新型コロナにより今後も拡大すると英調査会社が発表

英国発:調査会社 Business Research Company は「3Dプリンター市場グローバルレポート 2021:COVID-19 による成長と変化」と題する調査レポートを発表した。
それによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、3Dプリント市場にも影響が現れているという。それをもたらしているのが、急激に高まった製薬・医療業界への3Dプリントの導入だ。
パンデミック期間中、世界各地の医療機関はベッドや医療機器などの深刻な不足に見舞われ、危機的状況に陥った。COVID-19 感染患者は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスクがあり、一部患者の延命措置には高度な人工呼吸サポートが必要となる。こうした救命機器不足を補うため、3Dプリント製機器の需要が急伸したと見られる。
3Dプリンターの世界市場は 2015 年以降、年平均 16.8 % で拡大を続け、2020 年には約 86 億ドル規模に達した。さらに同市場の規模は 2025 年までに 19.4% 増の 200 億ドルにまで成長すると見込まれている。2025 年以降は 年率 13.4% で成長を続け、2030 年には 390 億ドルに達すると予測されている。