2023年4月8日土曜日

欧州初の3Dプリントの人工頭骨移植に成功

ドイツ発:ドイツのザルツブルグ大学病院でこのほど、欧州では初めて、3Dプリンターで出力された人工頭骨の移植に成功した。
移植手術を受けたのは 、新生児の頭蓋形成の奇形の一種、頭蓋狭窄症に苦しめられてきた55 歳のドイツ人男性。頭蓋狭窄症は、新生児のときの頭蓋骨の融合が早すぎるために頭部に奇形を起こす疾患で、骨の成長ではなく、生後1年の脳の成長が早すぎるために発生すると言われる。
この頭蓋異常があると、頭蓋内圧が上昇することに起因する失明や、知的障害などの問題を引き起こす可能性がある。頭骨の変形により見た目も悪くなり、それが心理的なストレスとなるケースもある。
頭蓋狭窄症のような骨の変形を矯正する手術は高リスクだが、このような場面で3Dプリント技術の活用がますます普及しつつある。 ザルツブルク大学病院顎顔面外科クリニック(MKG)の責任者 Alexander Gaggl 教授によると、今回の3Dプリント人工頭骨移植の1年前に、患者の頭皮下にプラスチック製バルーンを埋め込み、移植の際はこのバルーンに生理食塩水を入れ、望み通りの人工頭骨の大きさにまで膨らませて行ったという。
3Dプリントで出力した人工頭骨は、患者の頭部 CT 画像をテンプレートとして、3Dモデルが構築された。人工頭骨の製作には、クリニックの衛生基準をクリアした無菌プロセスが保証され、歯科医院などで多く使用されている医療用3Dプリンター「Kumovis R1」がもちいられた。人工頭骨の素材には高機能ポリマーの PEEK が使用された。
同クリニックによると、3Dプリント工程に要する時間は 10 時間程度。移植手術から6週間後、移植痕はほぼ完治した。患者の男性は今回の移植の結果に満足しているという。