2024年3月3日日曜日

「TCT Japan 2024」が開催(1月29~31日)

日本発:3Dプリンティングと積層造形技術(AM)の総合展「TCT Japan 2024」が1月29~31日の3日間、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催された。今年で6回目を迎える TCT Japan は延べ 100 社以上の出展と 200 台以上の関連機器が展示され、AM の旗を掲げる国産メーカーやアプリケーションが勢ぞろいした
基調講演では、3Dプリント関連市場の分析とコンサルティングを手掛ける Wohlers Associates、Boston Consulting Group(米)、Reeves Insight(同)、Additive Manufacturer Green Trade Association (AMGTA)、日産自動車各社からスピーカーを迎え、AM 市場の見通しや持続可能性、および AM アプリケーションに焦点を当てたスピーチを行った。
AM 導入率を欧州、中国、北米などの海外地域と比較すると、日本が真の意味で AM の創生の地であることを忘れがちだ。Wohlers Report 最新版によると、現時点で日本はアジア・太平洋地域における産業用3Dプリンター(5,000ドル以上)設置台数の 29% を占め、中国(36%)に次いで2番目に多い。 AM 技術の利活用に取り組む日本の姿勢については、スピーチに登壇した Wohlers の代表者は「大きなリスクをとり、新機軸に挑戦している他の組織に注目すべき」と発言し、「小規模なスピンオフおよびスタートアップ企業は、AM 分野で挑戦し、失敗し、学ぶのに適した場」だと指摘した。
自動車分野では、日産が AM の採用に積極的だ。同社チームはノースウェスタン大学と共同で、UV 投影ベースの新しい AM 技術を開発している。3年間の共同研究開発期間を経て、秒速 1cm のスピードで高速3Dプリントが可能な高速・高解像度システムを開発したという。もっか、大型自動車用部品に使用可能な大型3Dプリンターを含むプロトタイプシステムが構築されている。関係者によると、日産は今後数ヵ月以内に今回の新 AM 開発について詳細な情報を発表する予定だという。

2024年1月31日水曜日

老舗靴メーカーが3Dプリント金型で低コスト、生産効率アップを実現

イタリア発:高性能ウォーキングシューズや安全靴を 40 年以上にわたり製造する Grisport(ヴェネト州トレヴィーノ県)はこのほど、生産プロセスを見直して、高価なアルミ製射出金型から3Dプリント金型へ変更した。3Dプリント金型に切り替えたことで、従来のアルミ金型と比べコストは 1/10、生成速度は 50 倍高速化した。
同社は今回の更新で、製造コスト 5,000 ユーロ(5,500ドル)のアルミ金型に見合う最低販売数量(MSQ)を確保するデザインで呻吟する必要はもはやなくなったと話す。3Dプリント金型単体当たりコストは約 500 ユーロに下がり、従来より多くのデザインの商品を市場投入でき、限定生産品やカスタム品の受注生産する機会も生まれた。
同社は、高耐久の耐熱素材と3Dプリント技術の研究に数ヵ月取り組み、大型樹脂3Dプリンターの Photocentric Liquid Crystal(LC)Magna、素材として HighTemp DL401 を選択した。 同社が3Dプリント金型移行を承認した理由で重視したのは製品強度以外に、製造工程の時間短縮があった。
LC Magna 3Dプリンターは、3つのパーツから成る完全な靴型を 14 時間で製作できる。サードパーティの供給業者からアルミ金型を仕入れる場合は、数週間かそれ以上を要していた。従来のアルミ金型の場合、初期設計から最終製品完成まで約 4ヵ月を要していたが、3Dプリント金型ならばわずか 1ヵ月半ほどで最終製品の生産が可能だ。
3Dプリント金型の大量生産に関しては、フィジビリティスタディ(F/S)終了後、アルミ金型製造で培った技術でじゅうぶん対応可能だろうとコメントした。

2023年12月30日土曜日

豪 Luyten が南半球初の3Dプリント住宅建設へ

オーストラリア発:3Dプリント会社 Luyten(メルボルン)はこのほど、ニューサウスウェールズ大学(UNSW)と共同で、持ち家タイプの3Dプリント住宅の開発計画を発表した。南半球初の3Dプリント住宅になる。 
両者は3Dプリント住宅開発において、Luyten の大型建設用3D プリンター Platypus 製品群をフル活用する。同プリンターは人工知能(AI)を実装し、特殊コンクリートをもちいて住宅を建設する。 
また、UNSW の研究グループ Arch_Manu(次世代型建築製造の頭文字をとったもの)は、3Dプリント住宅建設のための専門知識を提供する一方、同プロジェクトのデータを集計し、オーストラリア国内での3Dプリント建設プロジェクトの新しい基準作りに活かす。
3Dプリント方式の利点は標準的な建設法と比較して、建設にかかるコストや時間、使用する原材料の総量、温室効果ガスの排出量のいずれも大幅な削減が見込める点にある。とりわけコンクリート型枠を使わなくて済む点は特筆される。 2024 年初頭にメルボルンで建設が予定されている3Dプリント住宅は、この新しい建築製造方法から生まれる高度な技術と利点を実証するのが目的だ。

2023年10月28日土曜日

グアテマラ初の「地震に強い」3Dプリント住宅がお披露目

グアテマラ発:グアテマラの大手セメント会社 Progreso はこのほど、同社の企業アクセラレータによる資金援助を通じて、同国初の3Dプリント住宅を完成させた。
同社はデンマークの 3DCPグループと共同で、COBOD International 傘下 BOD2 の建設用3Dプリンターをもちいてこの住宅を建造した。BOD2 建設用3Dプリンターは、世界で最も売れている3D建設用プリンターで、すでに米国とカナダをはじめ、メキシコを含む中南米諸国で広く採用されている。
同プロジェクトは、地震の多い地域における3Dプリント建造物の構造的な実証可能性を検証するのが目的。今回完成した3Dプリント住宅の壁面は高さ3m、延べ床面積は約 49 ㎡。着工から完成まで7日間、出力期間は 26 時間という短さだ。
住宅の壁面は3Dプリントの特性を活かし、きわめて有機的な形状となっている。他の工法では建設コストが非常に高くつき、しかもこの地域の主要な建材のコンクリートブロックでは実現不可能なデザインだ。
3Dプリンターで積層されたコンクリート壁は、ランチョタイプのヤシの葉の屋根が採用されている。ヤシの葉はラテンアメリカでは何世代にもわたって使用されている伝統的な屋根材だ。安価で住宅内部を快適な温度に保ち、また柔軟で軽量なため、地震が多発する地域に適している。


2023年8月30日水曜日

オランダの MX3D が金属3Dプリントパーツ用の新型ロボット制御システムを発表

オランダ発:世界初のステンレス鋼3Dプリント橋(2021)など、大型3Dプリント構造物を手掛ける MX3D はこのほど、金属3Dプリントパーツ用の新型ロボット制御システム「 MX Metal AM System 」を発表した。
創業 10 年目を迎える同社は、ワイヤアーク積層造形(WAAM)プロセスにもちいるロボットAMツールの開発を続けている。WAAM はツールヘッドから押し出された金属ワイヤを即座に溶着する技術で、大型金属造形物の制作を可能にする。
MX Metal AM System は超大型金属造形物の製造可能な閉鎖型ユニットで、重量 5 ㌧、6000 ✕ 1500 ✕ 3500 mm と同種の金属3Dプリンターでは最大級だ。ロボット制御系は8軸構成で、理論上はどのような形状も造形可能だ。
同社は同製品の販路として、金型成形や鍛造などを必要とする企業ユーザーを想定するが、他の方法ではコストが高くつく可能性がある少量部品製造も短時間でできる。たとえば、大型金属部品が不可欠な遠隔地にある鉱山の採掘現場などに最適だという。

2023年7月27日木曜日

カナダの 3Dバイオプリントベンダーが 352 万ドル超資金を調達

カナダ発:カナダの組織工学ベンチャー 3D BioFibR はこのほど、352 万ドル超のシード資金を調達したと発表した。
同社によると、調達資金は同社設備の施設拡張と、空調管理されたクリーンルームの導入、コラーゲン繊維製品の市場投入などに振り向けるという。組織工学市場は評価額 260 億ドルとされ、現在年平均成長率 35% で成長している。
今回の発表は、3Dバイオプリンティング用コラーゲンファイバー製足場材の2つの新製品のリリースに続くものだ。同社独自の完全自動乾式紡糸プロセスをもちいて製造されている。 これは、直径制御された高品質コラーゲン線維を商業規模で製造可能な唯一の工程とされる。
この資金調達ラウンドは Invest Nova Scotia の主導で、Build Ventures からのマッチング投資が行われた。 3Dバイオプリンティングは積層造形(AM)部門で確実に成長している分野であり、幅広い投資を集めている。
今年初め、バイオ医薬品機器サプライヤー Sartorius が、3Dバイオプリンティングの革新的企業 BICO 株の10% を取得したことが発表された。4,500 万ユーロ相当の株式取得と同時に、両社は研究開発イニシアチブと「セルライン開発ワークフローのためのデジタルソリューション」の開発で協力するパートナーシップも発表した。

2023年6月30日金曜日

NASAが火星用3Dプリント住宅「Mars Dune Alpha」実験棟を公開

米国テキサス州発:NASAはこのほど、ジョンソン宇宙センター(ヒューストン)内に作った「閉鎖居住施設」を報道陣に公開した。これは火星環境を模したシミュレーション計画 Crew Health and Performance Exploration Analog(乗組員の健康及びパフォーマンス探査研究、CHAPEA)のために作られたもの。NASA史上最長の模擬環境ミッションとなる。
約 160 ㎡ の居住空間は「 Mars Dune Alpha 」と命名され、4人の実験参加者が今後378日間をNASAの監視のもとで過ごす。Mars Dune Alpha の外壁や内部を区切る壁は3Dプリントで作られ、キッチン、クルー専用の部屋、2つのバスルームのほか、医療、仕事、レクリエーション区域が設けられている。
Mars Dune Alpha の建設を請け負ったのは、建設用3Dプリント専門会社の ICONで、同社の建設用3Dプリンター「Vulcan」を使用して建造された。この居住施設がシミュレートできない唯一の制限は火星の重力で、地球の表面重力の約 38% しかない。