2023年12月30日土曜日

豪 Luyten が南半球初の3Dプリント住宅建設へ

オーストラリア発:3Dプリント会社 Luyten(メルボルン)はこのほど、ニューサウスウェールズ大学(UNSW)と共同で、持ち家タイプの3Dプリント住宅の開発計画を発表した。南半球初の3Dプリント住宅になる。 
両者は3Dプリント住宅開発において、Luyten の大型建設用3D プリンター Platypus 製品群をフル活用する。同プリンターは人工知能(AI)を実装し、特殊コンクリートをもちいて住宅を建設する。 
また、UNSW の研究グループ Arch_Manu(次世代型建築製造の頭文字をとったもの)は、3Dプリント住宅建設のための専門知識を提供する一方、同プロジェクトのデータを集計し、オーストラリア国内での3Dプリント建設プロジェクトの新しい基準作りに活かす。
3Dプリント方式の利点は標準的な建設法と比較して、建設にかかるコストや時間、使用する原材料の総量、温室効果ガスの排出量のいずれも大幅な削減が見込める点にある。とりわけコンクリート型枠を使わなくて済む点は特筆される。 2024 年初頭にメルボルンで建設が予定されている3Dプリント住宅は、この新しい建築製造方法から生まれる高度な技術と利点を実証するのが目的だ。

2023年10月28日土曜日

グアテマラ初の「地震に強い」3Dプリント住宅がお披露目

グアテマラ発:グアテマラの大手セメント会社 Progreso はこのほど、同社の企業アクセラレータによる資金援助を通じて、同国初の3Dプリント住宅を完成させた。
同社はデンマークの 3DCPグループと共同で、COBOD International 傘下 BOD2 の建設用3Dプリンターをもちいてこの住宅を建造した。BOD2 建設用3Dプリンターは、世界で最も売れている3D建設用プリンターで、すでに米国とカナダをはじめ、メキシコを含む中南米諸国で広く採用されている。
同プロジェクトは、地震の多い地域における3Dプリント建造物の構造的な実証可能性を検証するのが目的。今回完成した3Dプリント住宅の壁面は高さ3m、延べ床面積は約 49 ㎡。着工から完成まで7日間、出力期間は 26 時間という短さだ。
住宅の壁面は3Dプリントの特性を活かし、きわめて有機的な形状となっている。他の工法では建設コストが非常に高くつき、しかもこの地域の主要な建材のコンクリートブロックでは実現不可能なデザインだ。
3Dプリンターで積層されたコンクリート壁は、ランチョタイプのヤシの葉の屋根が採用されている。ヤシの葉はラテンアメリカでは何世代にもわたって使用されている伝統的な屋根材だ。安価で住宅内部を快適な温度に保ち、また柔軟で軽量なため、地震が多発する地域に適している。


2023年8月30日水曜日

オランダの MX3D が金属3Dプリントパーツ用の新型ロボット制御システムを発表

オランダ発:世界初のステンレス鋼3Dプリント橋(2021)など、大型3Dプリント構造物を手掛ける MX3D はこのほど、金属3Dプリントパーツ用の新型ロボット制御システム「 MX Metal AM System 」を発表した。
創業 10 年目を迎える同社は、ワイヤアーク積層造形(WAAM)プロセスにもちいるロボットAMツールの開発を続けている。WAAM はツールヘッドから押し出された金属ワイヤを即座に溶着する技術で、大型金属造形物の制作を可能にする。
MX Metal AM System は超大型金属造形物の製造可能な閉鎖型ユニットで、重量 5 ㌧、6000 ✕ 1500 ✕ 3500 mm と同種の金属3Dプリンターでは最大級だ。ロボット制御系は8軸構成で、理論上はどのような形状も造形可能だ。
同社は同製品の販路として、金型成形や鍛造などを必要とする企業ユーザーを想定するが、他の方法ではコストが高くつく可能性がある少量部品製造も短時間でできる。たとえば、大型金属部品が不可欠な遠隔地にある鉱山の採掘現場などに最適だという。

2023年7月27日木曜日

カナダの 3Dバイオプリントベンダーが 352 万ドル超資金を調達

カナダ発:カナダの組織工学ベンチャー 3D BioFibR はこのほど、352 万ドル超のシード資金を調達したと発表した。
同社によると、調達資金は同社設備の施設拡張と、空調管理されたクリーンルームの導入、コラーゲン繊維製品の市場投入などに振り向けるという。組織工学市場は評価額 260 億ドルとされ、現在年平均成長率 35% で成長している。
今回の発表は、3Dバイオプリンティング用コラーゲンファイバー製足場材の2つの新製品のリリースに続くものだ。同社独自の完全自動乾式紡糸プロセスをもちいて製造されている。 これは、直径制御された高品質コラーゲン線維を商業規模で製造可能な唯一の工程とされる。
この資金調達ラウンドは Invest Nova Scotia の主導で、Build Ventures からのマッチング投資が行われた。 3Dバイオプリンティングは積層造形(AM)部門で確実に成長している分野であり、幅広い投資を集めている。
今年初め、バイオ医薬品機器サプライヤー Sartorius が、3Dバイオプリンティングの革新的企業 BICO 株の10% を取得したことが発表された。4,500 万ユーロ相当の株式取得と同時に、両社は研究開発イニシアチブと「セルライン開発ワークフローのためのデジタルソリューション」の開発で協力するパートナーシップも発表した。

2023年6月30日金曜日

NASAが火星用3Dプリント住宅「Mars Dune Alpha」実験棟を公開

米国テキサス州発:NASAはこのほど、ジョンソン宇宙センター(ヒューストン)内に作った「閉鎖居住施設」を報道陣に公開した。これは火星環境を模したシミュレーション計画 Crew Health and Performance Exploration Analog(乗組員の健康及びパフォーマンス探査研究、CHAPEA)のために作られたもの。NASA史上最長の模擬環境ミッションとなる。
約 160 ㎡ の居住空間は「 Mars Dune Alpha 」と命名され、4人の実験参加者が今後378日間をNASAの監視のもとで過ごす。Mars Dune Alpha の外壁や内部を区切る壁は3Dプリントで作られ、キッチン、クルー専用の部屋、2つのバスルームのほか、医療、仕事、レクリエーション区域が設けられている。
Mars Dune Alpha の建設を請け負ったのは、建設用3Dプリント専門会社の ICONで、同社の建設用3Dプリンター「Vulcan」を使用して建造された。この居住施設がシミュレートできない唯一の制限は火星の重力で、地球の表面重力の約 38% しかない。

2023年4月8日土曜日

欧州初の3Dプリントの人工頭骨移植に成功

ドイツ発:ドイツのザルツブルグ大学病院でこのほど、欧州では初めて、3Dプリンターで出力された人工頭骨の移植に成功した。
移植手術を受けたのは 、新生児の頭蓋形成の奇形の一種、頭蓋狭窄症に苦しめられてきた55 歳のドイツ人男性。頭蓋狭窄症は、新生児のときの頭蓋骨の融合が早すぎるために頭部に奇形を起こす疾患で、骨の成長ではなく、生後1年の脳の成長が早すぎるために発生すると言われる。
この頭蓋異常があると、頭蓋内圧が上昇することに起因する失明や、知的障害などの問題を引き起こす可能性がある。頭骨の変形により見た目も悪くなり、それが心理的なストレスとなるケースもある。
頭蓋狭窄症のような骨の変形を矯正する手術は高リスクだが、このような場面で3Dプリント技術の活用がますます普及しつつある。 ザルツブルク大学病院顎顔面外科クリニック(MKG)の責任者 Alexander Gaggl 教授によると、今回の3Dプリント人工頭骨移植の1年前に、患者の頭皮下にプラスチック製バルーンを埋め込み、移植の際はこのバルーンに生理食塩水を入れ、望み通りの人工頭骨の大きさにまで膨らませて行ったという。
3Dプリントで出力した人工頭骨は、患者の頭部 CT 画像をテンプレートとして、3Dモデルが構築された。人工頭骨の製作には、クリニックの衛生基準をクリアした無菌プロセスが保証され、歯科医院などで多く使用されている医療用3Dプリンター「Kumovis R1」がもちいられた。人工頭骨の素材には高機能ポリマーの PEEK が使用された。
同クリニックによると、3Dプリント工程に要する時間は 10 時間程度。移植手術から6週間後、移植痕はほぼ完治した。患者の男性は今回の移植の結果に満足しているという。

2023年2月15日水曜日

スイスの F1向け3Dプリントパーツ製造会社が世界的な包装機器サプライヤー BOBST と提携

スイス発:3Dプリント部品製造の Sauber Technologies AG(チューリヒ州ヒンヴィール)はこのほど、ラベルや包装、紙器、段ボール産業向け基板処理、印刷、コンバーティング機器および関連サービスを提供する世界的なサプライヤー会社の BOBST (ヴォー州ローザンヌ)とあらたに技術提携を結んだと発表した。
それによると、提携は複数年契約で、 Sauber が BOBST に対して最新鋭の3Dプリントパーツ、およびインクジェットラベル印刷機向けのエンジニアリングと開発を請け負い、今後の製品開発支援も行う。Sauber は F1向け3Dプリントパーツで磨いた積層造形(AM) 技術を包装ラベルマシン製造分野でも活かすという。
Sauber は、BOBST 独自技術のデジタル印刷モジュールクラスターパーツを3Dプリントで製造し、BOBST の将来のモジュールパッケージ生産のためのイノベーション戦略を加速させるとしている。