2024年11月14日木曜日

加ピザハット運営会社がピザスライス保温容器の3Dプリントデータを無償で提供中

カナダ発:カナダ国内でピザ宅配フランチャイズ「ピザハット」を運営する PH Canada Company は現在、ソニーのゲーム機 PlayStation5(PS5)の排熱を利用してピザを保温する容器「PIZZAWRMR」の3Dプリント用データを無償提供している(STL ファイルにアクセスするには氏名とメールアドレス、居住国の入力が必要)。
PIZZAWRMR の意匠は、ピザハットロゴの小屋の赤屋根をあしらっている。蓋はラップトップ PC スタイルで開閉し、中のピザスライスを簡単に出し入れできる。トップボックス内はピザスライス数枚分のスペースがある。PS5の排気を吹き込む構造で、一度に複数枚のピザスライスが保温できる。
ただしピザスライスはアルミトレーの上に載せて入れる必要がある。ピザクラストの屑や油脂が PS5に混入するのを防ぐためだ。
DL ページには PIZZAWRMR(本体、左スタンド、蓋、排気導入口、調整スタンド)の STL ファイルと PDF ガイドが用意されている。PDF ガイドによると、提供されている STL ファイルは「約 30 x 3.3 cmの背面通気口を備えた横置きゲーム機にのみ適合する」デザインとなっている。PIZZAWRMR を3Dプリントするためには、少なくとも 38 x 38 cm の広い造形ベッドを持つ3Dプリンターが必要。そのため、多くの FDM デスクトップタイプの3Dプリンターでは出力ができない(3Dモデルデータを切断しない限り)。PIZZAWRMR を3Dプリント可能な製品は Elegoo Neptune 4 Max、Prusa XL、あるいは Elegoo Orange Storm Giga などになる。

2024年8月31日土曜日

ガラス3Dプリントの新技術「ボリュメトリック加熱法」の研究開発が進行中

米国インディアナ州発:ノートルダム大学の研究者グループは現在、ガラス3Dプリントの新方式の開発に取り組んでいる。 
既存の3Dプリントテクノロジーには一般的なプラスチック樹脂フィラメントを溶融させる方式(FDM、FFF)や金属粉を焼結する方式(SLS など)、住宅建造用の大型3Dプリンターに見られるセメントを積層造形するタイプ、幹細胞由来のバイオ素材を使用する医療用のバイオ3Dプリントなど多岐にわたるが、依然として積層造形(AM)テクノロジーにとって難関なのが、ガラス素材をもちいた3Dプリントだ。ガラスは透明な素材というだけにとどまらず、薬品耐性や耐熱性、剛性に優れているという特徴がある。 
現在主流のガラス3D プリント方式は、ガラスフィラメントをレーザーなどの高エネルギー源で瞬時に溶融して造形するエクストルージョン法と、ガラス含有樹脂を使用した SLS ライクな焼結工程を後処理として行う焼結法があるが、いずれも短所がある。たとえば焼結法の場合、使用に耐えうるガラス密度の達成が難しく、後加工の焼結時に製品が収縮して外寸に狂いが生じるといった問題がある。外寸問題については DED(指向性エネルギー堆積法)方式ならば克服可能だが、レーザービームを照射された素材表面と内部のガラス分子の溶融にタイムラグが生じる問題は残る。 
こうした制約を回避するため、同大の研究者グループは「表面加熱」の問題に着目し、「ボリュメトリック加熱」が有効なことを発見した。ボリュメトリック加熱法では、ガラス素材の表面と内部の両方を同時に加熱することが可能になったという。 
まず、完全に透明なガラスを用意する。次いで、照射レーザーのエネルギー吸収材をガラスに塗布する。レーザービームはガラスを透過し、ガラス粒子を満遍なく加熱する。マイクロヒーターをガラス内に均一に配置して、各ガラス粒子をいっせいに加熱するようなものだ。 
今回発表された実験結果では、積層ベッド移動速度の最大値がガラス3D プリント速度の限界値だったことから、レーザー DED 方式(彼らは DGF[デジタルガラス成形法]と呼んでいる)の3Dプリンターを改良すれば、現行の FFF 方式と同等の高速造形も不可能ではないという。 

2024年5月1日水曜日

メキシコは3Dプリント産業のあらたなハブとなるか? 

カナダ発:米国勢調査局のデータによると、メキシコが中国を抜き、米国最大の輸入貿易相手国となった。メキシコの対米輸出総額は 2022 年初来の 11 ヵ月間で 3,807 億米ドルに達し、中国の 3,524 億米ドルを上回った。メキシコの対米輸出は、前年同期比で 18.1 % 増加した。
中国は 2015 年以来、長らく対米輸出で首位だったが、中国国内のゼロコロナ政策に関連した供給網の混乱や生産活動の停止の影響で、メキシコに首位を明け渡した格好だ。さらに、米国近くに生産拠点を置く「ニアショアリング」の取り組みにより、米国境の南接地域の生産能力はアップした。輸送コストも低く、納期の短縮も実現できるため、米企業の多くは海外の遠隔地からの輸入より、隣国メキシコからの輸入にメリットを感じている。 メキシコでは事業拡大のチャンスが見込めるため、3Dプリント関連企業はそれを活用すべきだ。以下は、メキシコで3Dプリント事業の展開を行っている 4社の実践例だ。
Axolotl Biosciences ─ メキシコの再生医療と組織工学に特化したスタートアップ。3Dバイオプリント技術を利用して、研究や移植のための生体組織や臓器プリントを目指す。同社はメキシコと米国の双方で事業展開を行っている。
Idinsa ─ 本社メキシコシティ。メキシコにおけるデジタルマニュファクチャリングのリーダー的企業。航空宇宙、自動車、医療、コンシューマ向け製品の各部門に対し、産業グレードの3Dプリントサービスを提供する。3Dスキャニング/モデリングから材料/技術の選択、最終部材の製造に至る幅広いサービスを用意。
● Mobility3D ─ メキシコ第2の都市モンテレイに拠点を置く、リハビリ市場に特化した3Dプリントモビリティデバイスの供給企業。患者個々のニーズを把握するため、理学療法士や医師と協力して患者の全身を3Dスキャンし、高度な義肢装具類を含む軽量デバイスを製作する。
● Zua Robotics ─ メキシコ国内の住宅不足を3Dプリント技術で解決することを目指す。コンクリート3Dプリント技術を使用し、廉価な住宅を短期間で建設する。住宅はデジタルモデルによるカスタマイズが可能で、専用マシンによりオンサイトでプリントが実行される。工程の合理化で人件費は削減され、工期も従来工法より 60% 短縮している。

参照元記事

2024年3月31日日曜日

3D Systems が Form 10-K 年次報告書の提出遅延で NYSE から警告を受ける

米国発:3D Systems(NYSE:DDD)はこのほど、ニューヨーク証券取引所(NYSE)から、NYSE上場企業マニュアルのセクション 802.01E 規定された提出基準により、NYSEの上場継続要件を満たしていないとの通知を受けた。
同社は、2023年12月31日締め会計年度分の年次報告書「Form 10-K」を、米国証券取引委員会(SEC)に期限内に提出しなかった。この件に関し、同社は Form 10-K 提出まで 2024 年3月 15 日から6ヵ月間の猶予があると通知された。NYSE の通知は、同社普通株上場に直ちに影響を与えるものではないものの、NYSE は 3D Systems に、「正当な状況と判断した場合、いつでも上場廃止手続きを開始する可能性がある」と警告した。
3D Systems 側は、2024 年 2 月 29 日に SEC に提出した同社の Form 12b-25 上で行った提出遅延に関する通知で、「財務報告および決算手続きに関連する作業を完了するために追加の時間、リソース、および労力が必要」のため、所定の期間内に Form 10-K を提出できなかったと釈明している。
同社は現在入手可能な情報に基づき、2024 年 2 月 28 日日付で SEC に提出済みの Form 10-K 準拠の財務情報と比較して、監査手続き完了の影響は今後提出する Form 10-K 準拠の財務結果に重大な変更はないと見込んでいる。

2024年3月3日日曜日

「TCT Japan 2024」が開催(1月29~31日)

日本発:3Dプリンティングと積層造形技術(AM)の総合展「TCT Japan 2024」が1月29~31日の3日間、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催された。今年で6回目を迎える TCT Japan は延べ 100 社以上の出展と 200 台以上の関連機器が展示され、AM の旗を掲げる国産メーカーやアプリケーションが勢ぞろいした
基調講演では、3Dプリント関連市場の分析とコンサルティングを手掛ける Wohlers Associates、Boston Consulting Group(米)、Reeves Insight(同)、Additive Manufacturer Green Trade Association (AMGTA)、日産自動車各社からスピーカーを迎え、AM 市場の見通しや持続可能性、および AM アプリケーションに焦点を当てたスピーチを行った。
AM 導入率を欧州、中国、北米などの海外地域と比較すると、日本が真の意味で AM の創生の地であることを忘れがちだ。Wohlers Report 最新版によると、現時点で日本はアジア・太平洋地域における産業用3Dプリンター(5,000ドル以上)設置台数の 29% を占め、中国(36%)に次いで2番目に多い。 AM 技術の利活用に取り組む日本の姿勢については、スピーチに登壇した Wohlers の代表者は「大きなリスクをとり、新機軸に挑戦している他の組織に注目すべき」と発言し、「小規模なスピンオフおよびスタートアップ企業は、AM 分野で挑戦し、失敗し、学ぶのに適した場」だと指摘した。
自動車分野では、日産が AM の採用に積極的だ。同社チームはノースウェスタン大学と共同で、UV 投影ベースの新しい AM 技術を開発している。3年間の共同研究開発期間を経て、秒速 1cm のスピードで高速3Dプリントが可能な高速・高解像度システムを開発したという。もっか、大型自動車用部品に使用可能な大型3Dプリンターを含むプロトタイプシステムが構築されている。関係者によると、日産は今後数ヵ月以内に今回の新 AM 開発について詳細な情報を発表する予定だという。

2024年1月31日水曜日

老舗靴メーカーが3Dプリント金型で低コスト、生産効率アップを実現

イタリア発:高性能ウォーキングシューズや安全靴を 40 年以上にわたり製造する Grisport(ヴェネト州トレヴィーノ県)はこのほど、生産プロセスを見直して、高価なアルミ製射出金型から3Dプリント金型へ変更した。3Dプリント金型に切り替えたことで、従来のアルミ金型と比べコストは 1/10、生成速度は 50 倍高速化した。
同社は今回の更新で、製造コスト 5,000 ユーロ(5,500ドル)のアルミ金型に見合う最低販売数量(MSQ)を確保するデザインで呻吟する必要はもはやなくなったと話す。3Dプリント金型単体当たりコストは約 500 ユーロに下がり、従来より多くのデザインの商品を市場投入でき、限定生産品やカスタム品の受注生産する機会も生まれた。
同社は、高耐久の耐熱素材と3Dプリント技術の研究に数ヵ月取り組み、大型樹脂3Dプリンターの Photocentric Liquid Crystal(LC)Magna、素材として HighTemp DL401 を選択した。 同社が3Dプリント金型移行を承認した理由で重視したのは製品強度以外に、製造工程の時間短縮があった。
LC Magna 3Dプリンターは、3つのパーツから成る完全な靴型を 14 時間で製作できる。サードパーティの供給業者からアルミ金型を仕入れる場合は、数週間かそれ以上を要していた。従来のアルミ金型の場合、初期設計から最終製品完成まで約 4ヵ月を要していたが、3Dプリント金型ならばわずか 1ヵ月半ほどで最終製品の生産が可能だ。
3Dプリント金型の大量生産に関しては、フィジビリティスタディ(F/S)終了後、アルミ金型製造で培った技術でじゅうぶん対応可能だろうとコメントした。