2014年3月17日月曜日

3Dプリントがやってきた ―― ジャマイカの場合

3Dプリンティング技術は今や食べ物から人体器官、さらには武器までとその可能性を拡大しつつある。そして、この大きな波はカリブ海の島国ジャマイカにも到達した。

3Dプリンティング技術じたい、取り立てて目新しいというわけではない。1984年、Charles 'Chuck' Hull 氏がデジタルデータから現実の3次元オブジェクトを作るために開発して以来、改良が重ねられ、プリンターの価格も現在では廉価モデルなら 1,200 米ドル程度にまで低下している。

首都キングストンに本拠を置く印刷会社 Pear Tree Press LTD. は昨年、従来のオフセット印刷事業からデジタル印刷へと経営の軸足を移し、その一環として市販の小型デスクトップ型3Dプリンターを1台、試験的に導入した。

「重要なのは、たとえ苦しくても変化の波を受け入れること。波に呑まれてはダメだ。波に乗らなければ」と、同社代表の Adam Hyde 氏。先月下旬、Pear Tree Press はジャマイカ国内の3Dプリンティング需要を掘り起こす目的で3Dプリントのデモを開催した。Hyde 氏によればデモを見に来た顧客からは「上々の手応え」を得たというが、単発の試作注文以外の正規の新規受注はまだないという。

一方、西インド諸島大学付属モナ地球情報学研究所( MGI )もまた、Pear Tree Press と同様に、この3Dプリンティングという変革の波に乗ろうと試みている。「現在、デスクトップ型3Dプリンター導入に向けた検討を本格化させているところだ」と、同研究所の企画開発コンサルタントの Michael Evelyn 氏は言う。「新型機種はどれも小型化が進み、価格も下落している。だが、商用モデルとなるとまだ恐ろしく導入コストが高い」。

MGI では3次元地形図と見取り図、および3次元建築モデルと市街モデル制作など、3Dプリンティングの商用需要はあると見ているが、現状ではまだ低いことを認めている。「昨年の受注はわずか1件のみだった」と Evelyn 氏

前出の Pear Tree Press でも事情は似たり寄ったりだ。だが Hyde 氏は、3Dプリンティングに対する顧客の関心が高まれば、将来的には携帯端末カバーや結婚式の贈答品の生産などの需要があると踏んでいる。

とはいえ現時点では、Evelyn 氏も言うように、小型デスクトップ3Dプリンターで提供できるものは「せいぜいカップやボウルなどの小物に、そしてまあ銃器が関の山。長期的に見て無難な線は、商用3Dプリント事業しかない」。

大規模プロジェクトの場合、上位機種の商用3Dプリンターならその場で製造可能なことから、海外へ外注に出すコストや輸送にかかるリスクが軽減できるなど多大なメリットがある。だが、ジャマイカ国内の3Dプリント需要を見る限り、商用3Dプリントの事業展開はまだ時期尚早だと Evelyn 氏。

現在、ジャマイカでは3Dプリンターに関する法的規制は一切ない。「米国でさえ、すでに殺傷力のある銃器が3Dプリンターによって国内で製造されているのに、何の規制もない。今のところ当局は、3Dプリント製品および3Dプリントサービスの需要が今後どこまで拡大するか、当面静観する方針だろう」。

3Dプリンター生みの親で現 3D Systems CTO の Hull 氏は、来たる5月 21日、「米国発明家殿堂」入りを果たす。

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