2014年3月24日月曜日

3Dプリントは「持続可能な生産」を実現できるか?

シンプルな小型プリンター1台で商品ができる ―― つい最近まで、このような発想はしょせん SF 小説の話だと考えられてきた。だが、技術の急激な進歩とともに、樹脂や食品、人体器官に至るまで、あらゆるモノが 3Dプリントで生み出されるようになると、かつては思いもよらなかった突飛な発想も現実となって出現する。
製品設計および生産工程における持続可能性という点において、3Dプリンティングのもたらすプラスの衝撃は計り知れない。現時点ではこの技術は生産工程全般を刷新するほどには進化していないが、それでもプロトタイプ製造工程数と廃棄物の削減、また輸送に伴う排出物の抑制に貢献しており、業界の垣根を越えて持続可能な商習慣への扉を開くものだ。
このような方法で製品の市場投入までのプロセスが迅速に処理される結果を見て、持続可能社会の研究を専門に行なっている研究者も興奮している。雇用の増加に伴って生産性も高まるというのは歴史的事実だからだ。雇用創出により地域共同体は発展し、域内経済も軌道に乗るようになる。生産のローカライゼーション化が与える影響は大きい。それは自動車や航空業界を見ればわかる。デトロイトを見るがいい。生産拠点が国外へとシフトしたのち、かつての企業城下町がどうなったか。
3Dプリンティングの威力が遺憾なく発揮されるのが、プロトタイピングだ。3Dプリンターは、設計者が頭に思い描いた素晴らしいデザインを極めて低廉なコストで試作品へと変換する。これは、幅広い業種にとって福音だろう。たとえば人工装具。3次元データに基づき腕や足を復元する手法はプロトタイピングの工程数そのものを減らせるし、持続可能な製品設計という観点においても目覚ましい進歩だ。フォードは、それまで数か月かかっていた自動車の車体およびエンジンのプロトタイピング製造工程に3Dプリンターを導入後、試作品製造に要する時間とコストが劇的に低下したと述べている。
現行のプロトタイピング製造工程および設計プロセスは排出物および廃棄物を大量発生させ、極めて厄介だ。だからと言って製作コストをカットすべく製作拠点の海外移転を進めれば、持続可能性に対する悪影響は増大する。海外で試作品を組み立て、それを本国へと逆輸入し、最終調整を経て完成させた試作品を再び輸出するのだから。開発時間の無駄であるばかりか、貴重な化石燃料の浪費にもなる。

化石燃料から吐き出される排出物が、結果的に企業の環境保全コストを押し上げるのは理の当然だ。3Dプリンターを使えば、メーカーは輸送燃料費のかかる輸送車両に依存することなく、「その場で」試作品の製造が可能になる。デジタル設計 / 3Dプリンティングはこのような輸送関連コストをほぼ解消し、プロトタイピング工程をスリム化する。さらなる効率化が課題とはいえ、今や3Dプリンターによって造形される製品の約 20% は試作品ではなく「最終完成品」として出荷されている。出荷に要する時間も短縮され、それだけ効率化が図れるということになる。

普及の本格化した3Dプリンターは、テクノロジーと労働、輸送と生産に関するわれわれの概念を根底から一新させた。ローカライゼーションは製品・サービスなどの分野を問わず、世界中至る所で注目を集める主題になった。イタリア発祥の「スローフード運動」然り、「製造業を米国に取り戻そう」運動然り。

いずれは自動車、食品、人工器官といった「製品」が次世代3Dプリント技術によって生み出されるだろう。可能性は無限大だ。

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