2015年5月4日月曜日

3次元スキャン & 3Dプリント レプリカで蘇る古代エジプトのミイラ

スウェーデン発:ストックホルム市の地中海近東考古学博物館( MOMNEA )は現在、最新鋭の3次元 CT スキャン検査を終えた古代エジプトの神官のミイラと、ミイラが身につけている護符の精密な3Dプリントレプリカ等を体験できるインタラクティブ展示を実施中だ。

同博物館では 2013 年から約1年かけて、所蔵している古代エジプトのミイラをリンショーピング大学病院の放射線技師および法医学の専門家チームに最新型 CT スキャナー「 Siemens Somatom Definition Flash 」を用いた3次元 CT 製作を依頼した。その結果、それまで知られていなかったミイラ内部の副葬品や推定死因まで特定できたとしている。

この CT スキャン検査を受けたのは、紀元前3世紀中葉のプトレマイオス朝時代の都テーベ[ 現在のルクソール市 ]の神官ネスワイユ。この神官のミイラは同博物館が 1928 年に開館した当時からの常設展示品。1960 年代に X 線検査を受けているが、今回の最新デジタル技術による CT 検査ではさらに新たな発見が相次ぎ、このミイラ内部には計 120 点にも上る宝飾品を身につけていることも分かった。

また、この神官は当時としては高齢の 60 歳ごろまで生きていたこと、歯の病気が原因の敗血症によって亡くなった可能性も初めて明らかになった。

現在、来館者は「 Inside Explorer Table 」によってこのミイラの内部構造を直感的に疑似体験できる。亡骸を収めた木棺やミイラを巻いている包帯などを、あたかも実際に手で取り除くようにタッチスクリーン上で操作可能だ。

今回のデジタル展示企画を実現したのは、Interspectral AB の3Dリアリティキャプチャ技術の専門家チーム。「スキャン可能なものなら、何でもインタラクティブ体験化できる」。このプロジェクトには Autodesk Inc.、3Dイメージングの FARO も協力し、ミイラや副葬品を写真測量およびレーザースキャンしたデータを「 Autodesk ReCap™ 」によって表面の細かなテクスチュアまで忠実に再現している。

また、ミイラと共に収められた副葬品も、今回3Dプリントと鋳造とのハイブリッドによって精密に再現されたレプリカを直接、触ることもできる。同博物館では、視覚障がいのある来館者にも展示品を体験してもらいたいとしている。今回の CT スキャンで初めて発見された、ミイラ内部の鷹の形をした黄金の護符も、忠実なレプリカとなって来館者を楽しませている。



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