2014年1月10日金曜日

患者本人の皮膚から 3Dプリントした「血管」を日本人研究者が開発

日本の佐賀大学と再生医療バイオベンチャーの「サイフューズ バイオメディカル」はこのほど、3Dプリンターで患者本人の皮膚細胞から動脈を造形する技術を共同開発した。同社共同設立者の一人、佐賀大学大学院工学系研究科教授 中山功一氏らの率いる開発チームによると、3Dプリントアウトされた動脈は人工透析や心臓の冠動脈バイパス手術の移植などに使用可能だという。同大学医学部では動物実験の評価中で、臨床試験を経て 4年後の 2018年ごろには一般治療用として実用化したい考えだ。

人工透析では大量の血液を透析機に送り込むため、樹脂製の人工血管が広く使用されているが、場合によっては患者体内での細菌感染を引き起こす恐れがある。今回開発された 3Dプリント技術では使用するのは患者本人の皮膚細胞であるため、自己免疫機能が働きやすくなる。

血管組織を傷つけずに立体再現するために、共同研究チームは金属針( 全長約 10mm、直径約 0.1mm )を 3Dプリンターに無数に取り付け、針の長さと分量を調整することで血管の太さを調節した結果、この 3Dプリント装置によって直径 2-3mm の動脈の立体複製を 10日で作製することに成功したという。

今回開発された新技術はすでに日本、中国、シンガポールで特許取得を済ませており、それ以外の国でも出願中。米国でも同様に血管の複製を作る技術の開発が続けられているが、日本での臨床試験が早い段階で終了すれば、この分野において日本が一歩、先んずる可能性がある。今後、この新技術によって細胞の複製作製が広範囲で開発可能になれば、失った器官や組織の「復元」も、安全かつ効率的に行えるようになるだろう。