2014年10月25日土曜日

薬も3Dプリントでオーダーメイドの時代へ

英国 / 米国発:セントラルランカシャー大学( UCLan )は目下、個々の患者のニーズに柔軟にカスタマイズ可能な薬剤製造3Dプリンターを開発中だ。

このプリンターは現段階では現行の処方箋および市販錠剤の「複製」出力に限られるが、最終的には患者の必要な薬剤分量を正確に製造することができるようになるという。同大学開発チームは、この「オーダーメイド」薬剤製造3Dプリンターの特許出願も準備している。

この新技術は、同大学薬学 / 生物医学部の Mohamed Albed Alhnan 博士率いるチームの開発した薬剤ポリマー フィラメント製造システムによって可能になった。一般的な3Dプリンターの樹脂フィラメントの代わりに使用でき、複雑な製剤工程および必要投薬量などを個々のケースに応じて高精度で割り出し、出力する。

Alhnan 博士は次のように述べている。「3Dテクノロジーのおかげで、このような新システム開発が行えるようになった。このシステムによって医療機関も新たな選択肢の提供が可能になり、以前は経験豊富なスタッフと専門施設が必要でコストが高くついた製剤工程も、ソフトウェア経由で簡単に必要な投薬量を正確に出力できる」。

同開発チームによれば、この新製剤システム技術を向こう5年以内に医療機関および製薬会社に導入可能にする計画で、10年以内にも一般向けモデルを市場に投入できるようにするという。

3Dプリント技術の医療分野への応用は広がっている。米国フロリダ州マイアミ大学の研究者チームは眼球にできる悪性腫瘍や先天性奇形などの外科手術による顔面にできた空洞をふさぐ人工頭骨や人工器官を3Dプリントで廉価に製造する技術を開発している。従来工法の補綴による顔面復元には約 15,000 USD もの高額な費用がかかり、しかも通常は健康保険の適用対象外だ。


また今年3月には、バイク事故で顔面を損傷した英国ウェールズ州カーディフの 29歳の男性が、3Dプリントによる複顔手術を受けている。執刀医チームは男性の顔の3次元 CT スキャン画像データから頭骨の正確な構造モデルを作成し、それに基づき3Dプリンターでチタン製ガイドとインプラントを製作した。昨年には、3Dプリント製「人工耳」の研究報告もある。この3Dプリント人工耳の外観は正常な耳と同様で、聴覚機能も至って正常に働いている。「人工耳」開発に当たったニューヨークの Weill Cornell 医学大学形成外科教授 Jason Spector 博士によれば、この3Dプリント人工耳は「事故、もしくは悪性腫瘍等で外耳の全て、または一部を切除した患者を助けることになるだろう」。

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