2015年9月12日土曜日

世界で初めて3Dプリントで製作された人工胸骨の移植に成功

オーストラリア / スペイン発:サラマンカ大学病院は現地時間 9 月 11 日、癌患者への3Dプリント人工胸骨の移植に世界で初めて成功したと発表した。

この3Dプリント人工胸骨は同病院の依頼を受けてオーストラリアのメルボルン市に本拠を置くカスタム医療機器専門メーカー Anatomics が製作した。製作チームは患部の高解像度 CT スキャン画像を基に、胸骨と肋骨の一部を忠実に再現。そのデータから、オーストラリア連邦科学産業研究機構( CSIRO )の3Dプリンターラボで出力した。

この3Dプリントインプラントはチタン製。CSIRO のラボにはチタン等の金属素材の加工ができる 130 万ドル相当のスウェーデン Arcam AB 製 SLS 3Dプリンターがあり、インプラントはこの3Dプリンターで製作された。* 

このインプラント移植を受けたのは、胸壁腫瘍と診断された 54 歳のスペイン人男性患者。この部位の形状は複雑で、従来のインプラント製造法では再現が極めて困難だった。チタンプレート自体は胸部外科手術では以前から使用されていたが、接合部のネジが時間が経過するにつれて緩むなどの問題があった。そこで執刀医達が選んだのが、この患者の移植用にカスタムメイド可能な3Dプリントによる再建術だった。

サラマンカ大学病院外科医 Jose Aranda 医博は次のように述べている。「我々は患者により安全性の高い選択肢を提供すると共に、術後の回復も早い手法を採用することにした」。この男性患者は移植手術のわずか 12 日後に退院し、その後の経過も良好という。

CSIRO の Adam Knight 氏は次のように述べる。「3Dプリントの利点はラピッドプロトタイピングにある。生命を救う外科手術法を期待するのならば、3Dプリントこそ間違いなくこれからのスタンダードだ」。



* Arcam AB 製3Dプリンターの日本国内向け販売は HTL Co. Japan Ltd. が行っている。

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