2015年9月27日日曜日

瞬時に固まるゲル内に複雑な造形を可能にする新しい3Dプリント技術を開発

米国フロリダ州発:フロリダ大学航空宇宙工学科助教 Thomas E. Angelini 氏率いるソフトマター研究所グループはこのほど、特殊な性質を持つゲル内にコロイド等のソフトマター素材から成るインクを注入し、内部で「宙吊り」状態にして複雑な形状を自由に造形する新たな3Dプリント技術を開発したと 電子版科学ジャーナル Science Advances 上に発表した。

同グループによると、形の崩れやすい液体状物質を粒状ゲル内に閉じ込めることで、通常の硬質素材による3Dプリントでは造形不可能な形状物の作成に成功した。µm 粒状ヒドロゲル母体として使用するのは市販の Carbopol® ETD 2020 ポリマーで、このゲルは力が加わった瞬間、固体から液体へと変化する特性を持つ。このゲル母体に様々な粘性を持つポリマー素材やコロイド、バイオ素材等を注射器状の針先からインクとして注入すると、その衝撃で周囲のゲルが液化し、その後内部のインクを永久固定する。Angelini 氏らはこの技術を用いて、マトリョーシカ状の入れ子式オブジェクトや結び目などの複雑な形状物を試作した。いずれも従来の3Dプリントでは作成不能なデザインだ。

Angelini 氏は次のように述べる。「現在、大学病院の外科医のために3Dプリンターの開発に取り組んでいる。我々は既にヒドロゲルから脳全体の 1/4 スケールモデルを作成した」。

だが、英マンチェスター大学材料科学科教授 Brian Derby 氏によれば、流体内の中空にドローイングするという技術自体は既に存在するという。「今回、極めて敏感に反応するポリマー素材をゲルとして使用した点は目新しいが、用途は非常に限定的で、作成に時間がかかる」。

また同氏は、ヒドロゲル内のプリント物の取り出しが困難な点も指摘している。この点は Angelini 氏も認めており、新しいゲル素材を開発中だとしている。



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