2016年1月17日日曜日

「鉄錆」から3Dプリント可能な新積層技術を開発

米国イリノイ州発:ノースウェスタン大学 Feinberg 医学部外科学および同大学Robert R. McCormick 機械工学 / 応用科学部助教 Ramille Shah 氏は科学誌 Advanced Functional Materials Vol. 25 上で、従来の SLS や指向性エネルギー堆積法( DED )に代わる新たな金属積層造形技術として、金属粒子、溶剤、生分解性エラストマー( PLGA )バインダーの混合剤をインク状にして単一ノズルから噴射して方法を開発したと発表した。

Shah 氏によれば上記複合材料は噴射後に焼結されて完成品となり、様々な合金の使用が可能で、金属粉床を使用する従来方式より統一規格部材が短時間かつ低コストで製造できるとしている。

Shah 氏は次のようにコメントしている。「我々の開発した新方式は3Dプリント可能な金属建造物の範疇を一気に拡張する。ありとあらゆる応用への扉を開くものだ」。

同開発チームの David Dunand 教授は次のように述べている。「積層造形と焼結工程とを分離した我々の方式は、一見すると却って複雑化したように見えるが、実際は積層と焼結を一体化した従来の方式より各工程が単純化されている。冶金技術の観点から見ると、緻密化過程でかなりの収縮が見られるにも拘らず、完成品は構造的変形や破断といった現象がなかったことには驚いた。このようなことはあまり例がない」。

新方式は直接金属レーザー焼結法( DMLS )や電子ビーム積層造形( EBM )ほどには厳格な作業環境は求められず、安全かつ安定して造形できる。たとえば酸化鉄[ 鉄錆 ]を水素還元してから焼結すれば、使用済み金属素材の有効活用にもつながり環境コスト面でも非常に優れた方式となる。Dunand 教授は「還元工程は一見すると無駄な工程にも思えるかもしれないが、高価な金属粉を使用する代わりに極めて安価な酸化物粉の使用が可能になる」と述べる。

SLS や DED 等、金属粒子床方式に代わる同様な開発事例は、たとえばイスラエルの XJet も「ナノ粒子ジェッティング NPJ 」技術の開発に取り組んでいる先行事例があるが、Shah 氏のチームは今回新開発した方式がバッテリー、固体酸化物形燃料電池 ( SOFC )、医療用インプラント、航空宇宙用機械部品、オンサイト建設材等の製造への応用が見込めるとしている。

参照元記事1
参照元記事2