2016年6月18日土曜日

海洋考古学者チームが沈没船の精密な3Dプリントスケールモデルを制作

英国発:海洋考古学者 John McCarthy 氏はこのほど、スコットランドとイングランド沖に眠る沈没船の3Dプリントスケールモデルを制作した。

Wessex Archaeology Limited のプロジェクト部長を務める同氏はスコットランド北西のエドラチリス湾に沈む 17 世紀頃の帆船と、第 1 次大戦時に病院船として使用され、イングランド南方沖で撃沈された汽船「 HMHS Anglia 」号の調査をしている。両船の3次元モデル制作のため、同氏は写真測量法とソナーイメージングを組み合わせて3D点群データを作成し、そこから3Dモデルデータを生成して3Dプリントした。

McCarthy 氏は次のように述べている。「目の前に立体として展示できれば、もっと受け入れられやすいし、学校や会議に持っていくこともできる。スケールモデルが最終的に完成したら地元博物館への寄贈も考えている」。

McCarthy 氏がエドラチリス湾の沈船調査を開始したのは 2012 年。そこで同氏は豪フリンダース大学講師 Jonathan Benjamin 氏と共同で、博士号取得のための指導を受けながらこの沈船調査に従事してきた。両氏は同湾で、堆積物に分厚く覆われた3基の大砲を発見し、その下には木造船体構造が残っていることを確かめた。この沈船について詳細は不明ながら、オランダの商船「 Crowned Raven 」だと見られている。同船は 1600 年代後半、エドラチリス湾で遭難したことが知られている。

3Dモデルが生成可能なだけの精確なデータ収集のため、両氏が用いた方法が写真測量法とソナーイメージング技術だった。写真測量法は異なる画像データをコンピューター上で重ね合わせて物体間の正確な位置関係を割り出すことができ、忠実な色再現とともに高解像度画像が得られるが、海底では海藻類などの海洋生物付着や視程不良のため、広範囲をカバーできない。そこで、それを補うためにソナーイメージングを活用した。全長 329 フィートの HMHS Anglia 号の場合、マルチビームソナーシステムも使用してさらに広い範囲をスキャンした。マルチビームソナーはミリ単位の精密測定には不向きなため、高解像度の機器も併用して走査を繰り返して正確な3Dモデルデータが獲得できたとしている。

McCarthy 氏は写真測量法とソナー探査技術が向上し、またまったく新しいレーザースキャニング手法の開発も進んでいることを理由として挙げ、今回のような調査手法が今後飛躍的に増えるだろうと指摘する。

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