2015年8月15日土曜日

3Dプリントでマウスの大脳組織作成に成功

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州発:ウーロンゴン大学インテリジェント高分子研究所細胞生物学研究者 Rodrigo Lozano 氏らのグループはこのほど、ハンドヘルド型3Dプリンターを使用して大脳皮質組織と同様の人工組織作成に初めて成功した。

神経科学者にとって、ヒトの大脳組織を直接観察する機会はほとんどない。動物から切除した細胞組織をシャーレに入れて培養したものを使用して研究するのが一般的だが、複雑な立体構造を持つ大脳組織とは似て非なるものであり、この方法が有効なのは神経変性や細胞間シグナル伝達の発達プロセス等を調べる場合にのみ限られていた。

Lozano 氏ら研究グループは、この欠点を3Dプリント技術で解決しようと試みた。マウスの胎児から未発達の大脳皮質ニューロンを取り出し、ゲランガムポリマーハイドロゲルに封じ込めてカプセル化したバイオインクを作成。このバイオインクは内部の神経組織を保護するだけでなく、多孔質なので代謝機能も培地内で再現され、室温で容易に凝固するという特徴もある。同研究者グループは、この人工組織をハンドヘルド型3Dプリンターで出力し、それを走査型電子顕微鏡( SEM )や、共焦点顕微鏡法と直接蛍光抗体法とを組み合わせた手法で内部構造を調べた。

その結果、ハイドロゲル内の細胞は成長し、数百マイクロメートル以上に規模が拡大し、5日後にはマウスの成熟した大脳皮質とよく似た層状構造へと変化した。

ただし同研究グループによれば、この新手法は大脳の代替組織をラボで人工的に作成するために開発したのではなく、新薬開発や神経細胞の観察などに携わる研究者が安価で実験を行える手段を提供するのが主眼だとしている。

ウーロンゴン大学は、4Dプリント技術の独自開発も行っている。

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